離婚「知っトク」ブログ

養育費の未払い分を一括請求するために必要なこととは?

2024.05.22
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養育費の一括請求の可否

養育費は、「子どもを監護・教育するために必要な費用のこと」と定義されるお金です。具体的には、未成熟の子どもの生活費、教育費、医療費等、子どもの面倒を見るために必要な費用の全般を意味します。このようなお金の性質上、養育費は通常、毎月一定の金額を支払うという形で約束されることになります。

もっとも、これは通常はこうなっている、というだけで、絶対的なルールということではありません。そのため、当事者同士で一括での支払いに合意することができれば、養育費の一括請求は可能ということになります。

養育費を一括請求する際の計算方法

養育費を一括請求する際、中間利息を控除するという考え方をとることになる可能性があります。中間利息とは、お金を支払うタイミングが変わることによって生じる不公平を調整する金銭と考えると分かりやすいかと思います。つまり、養育費を一括請求する場合、

もらう側:通常の扱いに則るのであれば、将来のある時点まで待たなければ支払いを受けられない分の金銭まで、現在の時点で支払ってもらえる

支払う側:通常の扱いに則るのであれば、将来のある時点までそのお金を自分の手元で運用することができたにも関わらず、現在の時点で手放さないといけない

という不公平が生じるため、その分を調整することが合理的ということになります。

中間利息を控除する場合の具体的な計算方法は、「『通常の扱いに則った場合の養育費をもらう期間』に応じた『ライプニッツ係数』という数値を、一括でもらう金額にかける」というものです。

このうち、「通常の扱いに則った場合の養育費をもらう期間」は、養育費の支払終期はお子様が20歳の誕生日を迎える月まで、というのが通常であるため、

20-【一括請求時のお子様の年齢】

ということになります。

また、「ライプニッツ係数」とは、交通事故の賠償金を算出する際も、本記事のテーマである養育費の一括請求の場面と同様に利息を控除することが問題となるため、控除すべき金額がいくらになるかということへの当事者に公平な指標・数値として作り上げられたものです。このような背景から、交通事故を取り扱う保険会社のHP等で公表されているものがございますので、詳しくはそちらをご参照ください。

養育費の一括請求のメリット

養育費の未払いを防ぐ

毎月一定額を支払うという通常の方法だと、途中で支払われなくなるおそれはどうしても存在します。実際にそうなってしまった場合の対処方法はもちろんありますが、そもそも「未払いが起きないこと」が一番良いということには変わりありません。そうすると、将来の分まで一括でもらってしまえば、未払いは物理的に起きようがなくなる以上、これは一括請求の大きなメリットの一つといえるでしょう。

離婚後に相手との連絡頻度が減る

毎月一定額を支払うという通常の方法だと、途中で振込み先口座が変更になった場合等、やむを得ず離婚後に相手方へ連絡をしなければならない場面が生じる可能性があります。この点、離婚時に一括でもらってしまえば、こうした連絡の必要性というのも発生しようがありません。このような心的負担の軽減もメリットの一つといえるでしょう。

養育費の一括請求のデメリット

養育費が一般的な金額より下がる可能性

「養育費を一括請求する際の計算方法」の項目で記載したとおり、支払う側から中間利息を控除したいという交渉を持ち掛けられた場合、それに応じる必要が出てくることが実情です。そうだとすると、毎月一定の金額を支払うという形よりももらえる総合計の金額が減少することになり得ます。これは、一括請求の一番のデメリットといえるかもしれません。

相手方との話し合いが長引く可能性

逆に、中間利息を控除することを拒否することも可能ではあります。冒頭の「養育費の一括請求の可否」の項目でお伝えしたとおり、そもそも、当事者同士で一括での支払いに合意する必要があるためです。つまり、こちらの言い分を相手方がそのまま飲んでくれるならば、中間利息を控除する必要があるといった法的観点を強いて出す必要はないのです。

とはいえ、現実的には、そのように上手く事が運ぶ場合は滅多になく、相手方には相手方の言い分があることがほとんどです。そうすると、お互い他方に譲ることができなければ、その分話し合いは長引くばかりということになります。中間利息を控除するか否か、そもそも一括で支払うか否かということの意見の隔たりが大きいようであれば、あまりこだわりすぎずに通常の扱いに基づく話し合いに切り替える勇気も必要となるでしょう。

養育費を一括請求する流れと注意点

まずは話し合いを始める

養育費を一括請求するためには、何はともあれそのことを相手方に伝え、話し合いを始めることが必要でしょう。その際には、できる限り具体的な請求金額とその金額を算定した根拠を明示することが推奨されます。相手方の立場からは、請求金額が初めから明示されている方が検討しやすいことには違いありませんし、算定した根拠に合理性があれば、「不当な請求を受けているのではないか?」といった疑いをいたずらに抱くこともなくなるためです。合理的な算定根拠は、例えば次の方法が考えられます。

①家庭裁判所が公表している「養育費標準算定表」にお子様の年齢と人数、もらう側と支払う側の双方の年収を当てはめて、毎月一定額をもらう場合の月額を算出する。

② ①で算出した金額×12×養育費をもらう年数(20歳-お子様の現在の年齢)で、一括の請求額を算出する。

③中間利息を控除する場合は、②で算出した金額×(養育費をもらう年数に対応するライプニッツ係数)で、控除する金額を算出し、それを②で算出した金額から引く。

話し合いで合意できない場合は、調停・審判となる

話し合いで合意できない場合、そのままでは「養育費をもらう」こと自体の正式な約束さえもできていない状態となってしまいます。そのため、もらう側としては、次の手段として、家庭裁判所まで「養育費請求調停」を申立てることを検討します。

調停も結局は裁判所内で行われる話し合いであるため、裁判所の外で行う話し合いと同じように、合意できないということはあり得ます。もっとも、そうした場合でも、養育費請求調停は自動的に「審判」という手続きに移行します。審判では最終的に裁判官が相手方の支払うべき養育費について判断することになるため、養育費をもらう」こと自体の正式なお墨付きは得られることになります。ただし、審判にまでなると、やはり「毎月一定の金額を支払う」という通常の形で認められるということになるでしょう。したがって、一括請求という条件の優先度が他の条件よりも高い、一括請求を強く望む、ということがあるのであれば、調停段階までに解決すべく、場合によっては他の部分での譲歩が必要になってくるかもしれません。

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当事務所の養育費回収代行サービス

当事務所ではシングルマザーに向けの養育費回収代行サービスを行っております。養育費におけるトラブルとして、以下のようなご相談をよく承っていました。

「調停で合意していたり、公正証書を作ったにもかかわらず、養育費が支払われていない」

「収入が減ったから払わないと言われてしまった」

「離婚時に養育費の約束をできなかったが、やっぱり支払ってほしいと考えている」

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