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不貞による慰謝料請求のポイントとは?

2024.02.05
  • 慰謝料
  • 男女トラブル

配偶者の不貞が発覚した場合、不貞をされた方は、何らかの形で責任を追及したいとお考えになると思われます。そして、責任追及の仕方は慰謝料請求になることが多いです。今回は、不貞による慰謝料請求のポイントについて弁護士が解説します。

不貞の慰謝料とは

不貞の慰謝料とはそもそもどのような性質を持つものなのでしょうか?「慰謝料請求」とは、不法行為に基づく損害賠償請求と言い換えることができます。つまり、法律上してはいけないこと(不法行為)をしたことによって(基づく)生じた損害に相当するお金を支払うことを求める請求(損害賠償請求)ということになります。そして、不貞があった場合の損害とは、不貞をされたことによって生じた精神的苦痛(以下「不貞慰謝料」といいます。)や、不貞が発覚した結果夫婦関係が破壊され、離婚せざるを得なくなったことによって生じた精神的苦痛(以下「離婚慰謝料」といいます。)をいうと考えられます。そもそも、不貞をされたことによる「つらい」、「苦しい」といった気持ちは、お金を支払ってもらったからといってただちに回復するものではありませんが、他に手段がないので、お金に換算してその損害を回復させようというのが不貞の慰謝料の性質なのです。

請求できる相手は?

では、不貞の慰謝料は誰に請求することができるのでしょうか?

⑴配偶者

不貞に及んだ配偶者に対しては、不貞されたことによって生じた精神的苦痛や、不貞が発覚した結果夫婦関係が破壊され、離婚せざるを得なくなったことによって生じた精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができます。

⑵不貞相手

配偶者と不貞に及んだ不貞相手にも、慰謝料を請求することができます。ただし、不貞相手に対しては、基本的には不貞されたことによって生じた精神的苦痛に対する慰謝料のみ請求できる場合が一般的です。なぜなら、離婚するかどうかは夫婦間で決められるべきことであり、必ずしも不貞行為があったからといってただちに離婚するとなるわけではありません。そのため、不貞相手が夫婦を離婚させようとして何らかの不当な干渉を行ったというような事情はない限りは、不貞相手が責任を負うことはないと考えられるからです。

不貞の慰謝料が請求できる条件

不貞の慰謝料が請求できる条件をチェックしてみましょう。前述したとおり、慰謝料請求とは、不法行為に基づく損害賠償請求と言い換えることができます。そのため、慰謝料請求が認められるためには、不法行為に基づく損害賠償請求が認められる必要があります。不法行為に基づく損害賠償請求が認められるためには、①誰かの権利を損害するような行為、②故意・過失③結果④損害⑤因果関係という条件を満たす必要があります。これを不貞による慰謝料請求の場面で考えると、①は不貞行為そのもの、②は不貞相手が、配偶者が既婚者であることを知っていたか、知ることができたこと③は離婚や夫婦関係の悪化、④は精神的苦痛、⑤は不貞行為のせいで離婚や夫婦関係の悪化が生じ、精神的苦痛が発生したと認められることになります。

請求できないケース

上記条件を満たさなければ慰謝料請求は認められないことになります。特に、以下のようなケースが、慰謝料請求が認められないケースとして多いです。

⑴不貞行為の時点で夫婦関係が破綻していたケース

慰謝料請求は、不貞行為によって円満だった夫婦関係が悪化したり、最悪の場合離婚したりすることになったことを理由として認められるものです。そのため、不貞行為をした時点で、すでに夫婦関係が破綻していたのであれば、円満な夫婦関係が壊されたということにはならないので、慰謝料請求は認められません。例えば、不貞行為の時点ですでに夫婦は何年も別居しており、その間特段連絡を取り合うこともなかったというような場合、慰謝料請求が認められない可能性があります。

⑵不貞相手が、配偶者が既婚者であることを知らなかったケース

不貞相手に対し慰謝料請求をする場合、不貞相手が、配偶者が既婚者であることを知っていたか、少なくとも知ることができたといえる必要があります。逆に、既婚者が不貞相手に対し自身が独身であるなどと偽って交際をしていた場合などには、不貞相手が、配偶者が既婚者であることを知らないし、知ることもできなかったといえ、慰謝料請求が認められない可能性もあります。

不貞慰謝料の相場は?

不貞の慰謝料の相場は、100万円から300万円ほどです。かつては高額な慰謝料が支払われるケースもありましたが、近年では、少なくとも裁判所が認定する慰謝料の金額の相場は下がっていると思われます。

相場より高額になるケース

では、相場より慰謝料が高額になるケースには、どのようなものがあるでしょうか?

⑴不貞の態様が悪質な場合

不貞が長期かつ頻繁に行われていたり、家族を蔑ろにして不貞が行われていたりする場合、その不貞は悪質であると評価され、慰謝料は高額になります。

⑵婚姻期間が長い場合

夫婦の婚姻期間が長期にわたる場合、不貞により壊される夫婦関係も深いものになると思われますので、このような場合には慰謝料は高額になります。

⑶小さな子がいる場合

小さな子がいる場合、その子の監護を、今後不貞をされた配偶者が一人でしなければならない可能性がありますし、小さな子がいる家庭を破壊する行為は強い非難に値します。よって、このような場合には慰謝料は高額になります。

⑷謝罪していない場合

不貞が発覚した後に、不貞をされた配偶者に対する謝罪がない場合、自分のした行為に対する反省がなく不誠実であるということになり、そのような当事者は非難に値するといえます。よって、このような場合には慰謝料が高額になります。

⑸精神的な不調をきたしている場合

不貞が発覚した結果、不貞をされた配偶者がショックを受け、それが原因で精神的な不調をきたしてしまっている場合、精神的苦痛の度合いが大きいことは明らかですので、このような場合には慰謝料が高額になります。

相場より低額になるケース

逆に、相場より慰謝料が低額になるケースには、どのようなものがあるでしょうか?

⑴夫婦関係が良好とはいえなかった場合

不貞が発覚した際に、夫婦関係が円満ではなかった場合、不貞によって生じた精神的苦痛はさほど大きくないと評価されますので、このような場合には慰謝料は低額になります。

⑵不貞発覚後の不貞をされた配偶者の行動が行き過ぎている場合

不貞が発覚した後に、不貞をされた配偶者が相手配偶者や不貞相手を罵倒する等の行動に出ている場合、その行き過ぎた行動を理由として慰謝料が減額される場合があります。なお、行き過ぎた行動が場合によっては不法行為と評価され、逆に損害賠償責任を負う場合もあり得るので、注意が必要です。

慰謝料を請求するための不貞の証拠とは?

相手方が任意に慰謝料の支払いに応じない限り、慰謝料を請求するためには証拠が必要になります。この点について、まず不貞があったことを示す証拠が必要であるとともに、不貞相手に対する請求では、自分が不貞をしていることについて故意・過失があることを示す証拠も必要になります。

不貞・浮気の証拠

不貞があったことを示す証拠としては、探偵の調査報告書や、メールやLINE等のやり取り、動画や写真、不貞を認める書面などが考えられます。また、異性用の商品の購入履歴や、ラブホテルの利用履歴なども、一定の証拠になり得ます。

故意・過失の証拠

故意・過失の証拠としては、メールやLINEのやり取りが一番多いと考えられます。また、不貞に及んだ配偶者が結婚指輪をしていたり、子がいたりすることを何らかの外形的な様子で認識できたことを示す証拠なども、故意・過失の証拠になるでしょう。

不貞の慰謝料を請求する方法

不貞の慰謝料を請求する方法には、どのようなものがあるでしょうか?

直接相手と話し合って交渉する

まず、直接不貞相手と会って交渉することが考えられます。その場で慰謝料について合意できれば、最も早い解決方法になります。しかし、不貞相手に会うことはそれ自体精神的苦痛が大きいですし、場合によってはトラブルになる可能性もあります。

内容証明郵便を送る

次に、内容証明郵便を送り、その中で慰謝料の支払いを求めるという方法が考えられます。直接会って話をすることによる上記のデメリットを回避し、相手方に本気度を示すことができる点ではメリットがありますが、相手方が無視を決め込んでしまえばそれ以上打つ手はありません。

調停を申し立てる

さらに、調停を申し立てるという方法もあります。調停は、裁判所を介し、当事者が紛争について話し合いをする手続です。裁判所の調停委員と呼ばれる方が手続に関与してくれるため、冷静に話し合いを進められるというメリットがある一方、あくまで調停は話し合いなので、相手方が慰謝料の支払いに応じない場合には調停は不成立となり終了してしまいますので、強制的に慰謝料の支払いをさせることはできません。

裁判に移行する

最終手段は裁判(訴訟)になります。上記3つの手段に比べ手間も時間もお金もかかってはしまいますが、裁判官による判決で強制的に慰謝料の支払いをさせることができます。

不貞の慰謝料請求の時効

不貞の慰謝料請求は、不貞慰謝料と離婚慰謝料で異なります。不貞慰謝料の場合、不貞行為から3年、離婚慰謝料の場合、離婚から3年で時効が成立してしまいます。前述したように、不貞相手に対する慰謝料請求は不貞慰謝料であることが一般的であるため、慰謝料請求をしたときにすでに時効にかかっているケースも少なくありませんので注意が必要です。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)