離婚「知っトク」ブログ

年金分割の手続きの流れや必要書類

2017.09.13
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1,はじめに
年金分割の手続は,それほど難しいことではありません。
詳細は年金事務所に問い合わせて担当者が教えてくれるとは思いますが,念のため説明しておきますね。

2,合意分割の請求を行う場合の手続
(1)「年金分割のための情報通知書」を取得する
ア 手続
まず,年金事務所または各共済窓口(詳しくは後述します。)に問い合わせて,「年金分割のための情報提供請求書」をもらいましょう。お手元に届くまでに,数週間かかりますので,早めに請求だけはしておきましょう。
※再請求する場合は情報提供を受けた日から3か月が経過していないといけません。
※被用者年金制度の一元化(共済年金がなくなりました)のため、平成27年9月30日までに発行された「年金分割のための情報通知書」は現在使用できません。
イ 請求者
情報提供の請求は、2人連名で行うことも1人で行うこともできます。
ただし、1人で請求した場合、相手方の記録等が特定できないときは、情報の提供ができないことがあります。
また、離婚後に、当事者の1人から請求があった場合、請求者だけでなく相手方にも情報が提供されます。
ウ 分割請求の必要書類
必要書類は、
①年金分割のための情報提供請求書
②年金手帳、国民年金手帳、または基礎年金番号通知書、
③戸籍謄本(離婚後はそれぞれの現在の戸籍謄本が必要です。また、現在の戸籍謄本が婚姻期間中を含んでいない時には離婚時の戸籍謄本も必要になります)
です。
エ 年金試算額の照会
情報提供の請求の際に50歳以上である方または障害年金を受けている方は、年金試算額の照会をすることもできます
(年金分割をされる側の方でも情報提供の請求をすれば照会可能です)。
照会ができない方の場合は、ご自身で試算するしかありません。
オ 請求先の役所・機関
請求者又はその配偶者(配偶者であった方)が、
婚姻期間中に加入していた年金制度の事務を掌握するいずれかの機関
に請求をします。
例えば、
夫が当初私学共済に加入していて、国家公務員共済組合に変更になっていて、妻が厚生年金である場合、
日本私立学校振興・共済事業団共済事業本部広報相談センター相談室、国家公務員共済組合、年金事務所
のいずれかの機関に情報提供の請求を行うことができます。
(ア)民間会社等の被用者である間の厚生年金
年金事務所
(イ)国家公務員共済組合の組合員である間の厚生年金
請求時に所属している各省庁の国家公務員共済組合
請求時に退職しているときは国家公務員共済組合連合会
(ウ)地方公務員共済組合の組合員である間の厚生年金
地方公務員共済組合
(エ)私立学校教職員共済の加入者である間の厚生年金
日本私立学校振興・共済事業団共済事業本部広報相談センター相談室
カ 「年金分割のための情報通知書」の受領
概ね、申請から1週間程度で「年金分割のための情報通知書」が発行されて手元に届きます(郵送、窓口受取りのいずれも可能です)。
ただし、国家公務員・地方公務員・私立学校教職員であった期間がある場合、1ヶ月程度かかることが多いようです。
「年金分割のための情報通知書」は、2人連名で請求した場合にはそれぞれに送付されます。1人で請求した場合、離婚前は請求者だけに送付され、離婚後は元夫婦双方に送付されます。
(2)按分割合の合意をする
ア 按分割合
情報通知書を見ると「按分割合の範囲」が記載されております。その按分割合の範囲で、按分割合の合意をすることになります(按分割合は最大0.5)。
当事者間で合意が成立しなければ、按分割合を定める調停や審判を申し立てることになります(財産分与とは別個に申立てが必要です)。
最初から審判を申し立てることもできますが、場合によっては調停に付されることもあります。
また、離婚訴訟において附帯処分の申し立てをすることもあります。
裁判所に対し、按分割合についての審判を求めた場合、99%「0.5」になります(平成27年度の厚生労働省の統計)。
 そのため、当事者間の合意も基本的には「0.5」となります
(ただし、慰謝料や財産分与等の他の離婚条件との兼ね合いで年金分割をしない旨の合意、すなわち按分割合を下限とする合意がなされることはあります。単に当事者間で年金分割をしないとだけ合意しても、審判等を申し立てられて按分割合が決まってしまえば年金分割請求を妨げることはできませんから、年金分割をしないようにするためには、按分割合を下限とする合意をします)。
イ 合意の方法
以下の合意方法のみ認められます。
①裁判所の調停・審判・判決・裁判上の和解
②公正証書
③公証役場での私署証書認証(当事者が作成した合意書を公証人が意思確認する)
④当事者が作成した合意書を夫婦双方またはその代理人が年金事務所等に直接持参する(年金事務所に夫婦2人で来て、年金事務所に置いてある書式を使ってその場で合意書を作成することもできます。)。
ウ 合意の時期
(ア)離婚前に合意するメリット
元夫婦の関係性にもよりますが、離婚後は元配偶者と協議をしたり、協力を得ることが難しくなってしまう場合があります。
そのようなことが予想される場合、離婚前に合意をしておいた方がよいでしょう(特に④の合意方法を選択したい場合)。
また、合意前に元夫または元妻が死亡してしまった場合、年金分割が受けられない結果になります。
しかも、離婚後の死亡では遺族年金も貰えません。つまり、離婚前に合意をすることには、年金分割も遺族年金設けられないという事態を避けられるというメリットがあります。
(イ)離婚後に合意するメリット
年金分割の話をすると離婚協議がこじれそうである場合、年金分割の話し合いを離婚後に回すことで、離婚を早期にすることができます。
(3)年金分割の請求
ア 手続
①合意書、公正証書、調停調書、審判書、または判決書と②標準報酬改定請求書を、年金事務所または共済窓口に提出して請求します。
なお、合意分割の請求が行われた場合、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます。
イ 請求者
合意分割は、当事者の双方または一方から請求できます。
国民年金第3号被保険者であった方は、合意分割と3号分割を同時に請求することができます。
ウ 請求先の役所・機関
第1号改定者が、婚姻中に加入していた年金制度の事務を掌握するいずれかの実施機関に請求します(1箇所の実施機関に請求をすれば、すべての実施機関に請求したことになります)。実施機関は、情報通知書を請求する機関と同じです。
例えば、夫が第1号改定者であり、当初私学共済に加入していて、国家公務員共済組合に変更になっている場合、妻が厚生年金であったとしても、日本私立学校振興・共済事業団共済事業本部広報相談センター相談室、国家公務員共済組合に請求する必要があり、年金事務所には請求できません。
エ 請求できる期間
按分割合が決定しても、年金分割請求(標準報酬改定請求)をしなければ、年金分割はされませんから、速やかに年金事務所等で手続をする必要があります。
請求期限は、原則として、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内です(離婚後に行います)。ただし、離婚から2年以内に調停や審判を申し立てたときは、調停成立や審判確定、和解成立等のときに既に2年が経過していても、調停成立や審判確定、和解成立等の翌日から1か月まで請求可能です。
なお、離婚の日とは、①協議離婚の場合は離婚届を提出した日、②調停離婚・和解離婚の場合は調停・和解が成立した日、③審判離婚・判決離婚の場合は不服申立期間経過後の確定の日です。調停離婚・和解離婚、及び審判離婚・判決離婚では、報告的届出として役所に離婚届を提出しますが、その提出日が離婚の日ではない点に注意が必要です。
(3)分割結果の通知
年金分割請求がなされると、按分割合に基づき、当事者それぞれの厚生年金の保険料納付記録の改定が行われます。
分割結果については、第1号改定者が婚姻中に加入していた年金制度の事務を掌握する機関それぞれから「標準報酬改定通知書」の交付をもって、当事者2人に通知されます。
 
3,3号分割だけの請求を行う場合
(1)手続
 年金事務所または共済窓口に「年金分割の標準報酬改定請求」という手続をするだけです。
 合意分割とは異なり、当事者双方の合意は必要ありません。
(2)請求者
3号分割については分割を受ける方(国民年金第3号被保険者であった方)から請求できます。
(3)必要書類
必要書類は、
①標準報酬改定請求書
②年金手帳、または基礎年金番号通知書
③戸籍謄本(離婚後はそれぞれの現在の戸籍謄本が必要です。また、現在の戸籍謄本が婚姻期間中を含んでいない時には離婚時の戸籍謄本も必要になります)です。
(4)請求できる期間
離婚後に行います。
そして、離婚等をした日の翌日から起算して2年を経過したときは、請求することができなくなります。ただし、離婚から2年以内に調停を申し立てたときは、調停成立や審判確定のときに既に2年が経過していても、調停成立や審判確定から1か月まで請求可能です。
また、元配偶者が死亡した場合、死亡してから1か月以内に請求しなければなりません。
(5)分割結果の通知
年金分割請求がなされると、
標準報酬等を2分の1に分割する改定が行われ、改定後の標準報酬等について、3号分割の請求者とその相手方に対して、「標準報酬改定通知書」をもって、通知されます。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)