離婚「知っトク」ブログ

年収2000万円を超える場合や権利者の財産が多い場合の養育費

2017.10.27
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1,はじめに
今回は,
①算定表の上限を超える収入がある場合の算定方法
 ②権利者の収入が義務者を上回る場合の算定方法
 ③特有財産からの収入や、別居時に持ち出した財産、多額の資産がある場合の算定方法
 ④義務者に債務や実家への仕送りがある場合の算定方法
についてお話いたします。

なお、「義務者」とは婚姻費用や養育費を支払わなければならない方、「権利者」とは婚姻費用や養育費をもらえる方をいいます。
 
2,義務者の収入が算定表の上限を超える場合の算定方法
(1)問題点
算定表では、給与所得者については2000万円、事業所得者については1409万円が上限となっています。
そのため、これらの上限額を超える収入がある場合にどのように算定すべきかが問題となります
(高額所得者の場合は一般的に収入をすべて生活費にあてるわけではないため、
単純に標準算定方式によって金額を決めると生活実態を反映しない金額となってしまうおそれがあります)。
(2)養育費について
養育費については、その性質上、収入に比例して増加するものでは必ずしもありません。
そのため、
子どもが1人の場合の養育費については、基本的には、算定表の上限額(0歳〜14歳:20万円、15歳〜19歳:28万円)で足りると考えられております。
(3)婚姻費用について
婚姻費用については、従前の生活実態を踏まえ、個別の事案に応じて、柔軟に基礎収入を認定すべきとされております。
 
3,権利者の収入が義務者より高い場合の養育費の算定方法
権利者の収入が義務者の収入よりも高い場合でも、養育費の支払いを免れることはできません。
このような場合は、権利者の収入が義務者と同額である場合の養育費分担額を上限として、標準算定方式どおり計算することになります。
 
4,特有財産から収入を得ていることが算定にあたって考慮されるか?
婚姻費用の分担については、「資産、収入その他一切の事情」を考慮するものとされています(民法760条)。そして、養育費についても同様に考えられます。
しかし、婚姻費用や養育費の算定において、資産を考慮することは一般的には少ないです。これは、資産からの収入によって家計をやりくりしている方が少ないためです。もちろん、実際に家計の元手として資産を運用している場合は、資産からの収入が婚姻費用や養育費の算定基礎となります。
特有財産や特有財産からの収入については、夫婦別産制の原則(民法762条1項)から、原則として算定基礎に含めないものと考えられます。しかし、特有財産からの収入が、夫婦が同居していた時期から家計にあてられてきたような場合には、特有財産からの収入を算定基礎となる収入に加算することになります。
 
5,権利者が別居時に財産を持ち出して家を出て行った場合
(1)原則
義務者の方から、「権利者が別居時に財産を持ち出していったから、十分な生活費を既にあるはずである。ゆえに婚姻費用を支払わない」というような主張がなされることがあります。
しかし、財産を持ち出して家を出て行ったとしても、婚姻費用や養育費の算定にあたっては、原則として考慮されません。これは、財産分与において決着されるべき問題となります。
(2)例外
ただし、別居時に持ち出した金額が義務者の年収を大幅に超えるなど、婚姻費用を修正すべきといえるほどの不均衡が認められる場合に、持ち出した財産を生活費にあてるべきとして、婚姻費用分担義務がないと判断した裁判例もあります(札幌高等裁判所平成16年5月31日)。
 
6,権利者に多額の預貯金がある場合
義務者の方から、「妻(権利者)はこれまで家計を管理してきており、夫(義務者)の給与も妻管理の口座に振り込まれていたから、妻の手元に多額の預貯金があるはずである。ゆえに、婚姻費用を支払う必要はない」というような主張がなされることがあります。
しかし、今まで貯めてきた預貯金についても財産分与で決着されるべき問題であり、婚姻費用や養育費の算定にあたっては考慮されません。
 
,義務者に債務がある場合
(1)原則
義務者に債務がある場合、婚姻費用や養育費の算定にあたって考慮してほしい旨の主張が出ることがあります。
しかし、債務の支払いは扶養義務に優先しないとの見解から、債務を算定の基礎としないのが現在の実務となっております。
(2)例外
もっとも、夫婦の共同生活を維持するために生じた債務については、義務者の借り入れにより権利者も恩恵を受けたといえるため、夫婦で分担することが相当です。
よって、夫婦の共同生活を維持するために生じた債務について義務者が全額支払っている場合は、婚姻費用・養育費の算定にあたって、債務が考慮されることになります。
 
8,義務者が実家に仕送りをしている場合
義務者が実家に仕送りをしている場合、義務者から「仕送りをしないと実家の両親の生活が立ち行かないため、婚姻費用や養育費の算定にあたって考慮してほしい」という希望が出ることがあります。
しかし、夫婦間・未成熟子との親子間の扶養義務は、両親に対する扶養義務に優先します。
したがって、実家への仕送りは、婚姻費用・養育費の算定の基礎とされません。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)