離婚「知っトク」ブログ

慰謝料が請求可能な離婚原因とは?

2023.07.10
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離婚における慰謝料とは

弁護士として離婚事件に携わっていると、相談にいらっしゃった方が離婚を考え始めた理由やきっかけは、やはり、夫婦間のマイナスな出来事や負の感情にあることが圧倒的に多く、これに対する慰謝料を望む方は決して少なくありません。もっとも、残念ながら、法律の世界では、離婚に至ったからといって、そのきっかけとなった夫婦間のマイナスな出来事や負の感情について、必ずしも慰謝料の請求を問題にできるではありません。

では、どのような離婚原因であれば、それによって被った精神的苦痛に対して慰謝料を請求できるのでしょうか。解説していきます。

慰謝料請求が認められる離婚原因と慰謝料の一般的な相場

慰謝料請求が認められる典型的な離婚原因は、以下の6つです。共通しているのは「被害者が加害者から慰謝料の支払いを受けて救済されるべき必要性があるほどに違法性がある」という点です。つまり、以下の場面はいずれも、加害者の行為が法律上の「不法行為」に当たり、損害賠償を受ける法的な権利が発生しているといえる場面なのです。したがって、慰謝料の支払いを受けることを目指すためには、ご自分の状況がこのような場面に該当することが条件となるといえます。

また、訴訟等の最終局面で認められる慰謝料の金額がいくらになるかということについては、それぞれのパターンによって、ある程度相場となる金額が存在します。

浮気・不倫行為のうち、不貞行為に及んでいるもの

配偶者が第三者との間で性行為に及んだ場合、それは不貞行為として慰謝料請求の理由となります。一般的な相場は100万円~300万円程度と考えられており、300万円以上の慰謝料を認めた裁判例はあまり多くはないのが実際のところです。もっとも、不貞関係にあった期間や不貞行為の頻度、不貞行為に至った経緯、当事者の収入、不貞行為が婚姻関係にもたらした影響等の具体的な諸要素を考慮した結果、その不貞行為の悪質性が高いと判断されれば、相場よりも高い金額での慰謝料請求が認められる可能性は決してゼロではありません。

DV(家庭内暴力)

そもそも物理的な暴力行為は違法な行為であるところ、配偶者からこうした物理的、身体的な暴力を受けた場合は当然慰謝料請求の理由となります。一般的な相場は数十万円~300万円程度と考えられていますが、暴力を受けていた期間、頻度、怪我を負ったか、怪我の程度等、個別の事情によっては、相場よりも高い金額での慰謝料請求が認められる可能性があります。

悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居・協力扶助義務(民法752条)に違反する行為のことをいいます。具体的には、配偶者の生活費を負担できるだけの収入や資力があるにも関わらず一切生活費を負担しない、配偶者の住む家にも全く帰宅せずに配偶者と別居を続けているといった行為が該当します。このような行為も、法律で定められた義務に違反している以上、違法性があると評価されるため、一般的に慰謝料請求の理由になり得ます。相場としては、数十万円~100万円程度であると考えられています。

セックスレス・性の不一致

セックスレス・性の不一致の原因が配偶者のどちらかによる一方的かつ合理的な理由のない性交渉の拒否にある場合は、そのような性交渉の拒否に対して慰謝料請求をすることができる可能性があります。

この点、合理的な理由があると評価される典型例は、心身の不調、拒否している側が女性の場合妊娠・出産等で性交渉ができない状態にある、拒否されている側の配偶者に暴力や暴言、不貞行為等の有責行為がある、等です。このように、性交渉の拒否については、他の慰謝料請求の理由と比較して、正当性が認められるパターン=慰謝料請求ができないパターンが多いため、慰謝料請求をする前にそのようなパターンに該当しないか確認されることをお勧めします。請求できる場合、相場としては、数十万円~100万円程度であると考えられています。

モラハラ(モラル・ハラスメント)

モラハラとは、人格を否定する言葉を投げかけたり、無視したり等、言葉や態度による精神的な暴力、嫌がらせのことを言います。被害者側の心や個人としての尊厳を傷つける違法な行為であることは間違いがありませんが、こうした精神的な暴力は物理的な暴力と比較すると、どうしても表面化しづらい、客観的な評価が難しいという特徴があるため、一般的な相場も数十万円と低めになりがちです。もっとも、客観的に見ても悪質であることが明らかである場合等、個別の事情によっては100万円~300万円の慰謝料が認められる可能性もあります。

慰謝料が請求が認められない離婚原因

慰謝料請求が認められる典型的な離婚原因は、以下の2つです。共通しているのは、どちらかが一方的に加害者で他方が被害者という訳ではないということ、それ故に慰謝料の支払いを受けて救済されるべき必要性があるとまではいえないということです。

性格の不一致

離婚原因が単に性格の不一致にすぎない場合は、離婚に至ることについてどちらかが一方的に加害者でどちらかが一方的に被害者という訳ではない以上、法的には慰謝料の請求は認められないということになります。

価値観の相違

夫婦が共に生活していく中で価値観の相違があることが明らかになったといった理由で離婚する場合は、離婚に至ることについてどちらかが一方的に責任を負うということにはなりません。したがって、やはり、法的には慰謝料の請求は認められないということになります。

配偶者の借金

配偶者に借金があるという事実は、それだけでは慰謝料請求権が生じる理由とすることは難しくなっています。その借金の理由が生活費のためである場合は、夫婦の同居・協力扶助義務(民法752条)、すなわち、生活を支え合う義務がある以上、どちらかが一方的に加害者でどちらかが一方的に被害者であるという関係にはならないためです。他方で、借金がどちらか一方の浪費のためのものであった場合は、慰謝料を請求する余地が生じ得ます。

離婚で慰謝料請求をする際に弁護士に依頼するメリット

もし、ご自身の状況が慰謝料請求の認められそうなケースに該当する場合は、慰謝料を請求するための具体的な方法論を考えることになります。この点、慰謝料を請求することについて、弁護士にご依頼いただくことは、大小様々なメリットをあなたにもたらします。典型的なメリットは以下の4つです。

相手方との交渉時のストレス軽減

弁護士に相手方との交渉の代理人をご依頼いただいた場合は、相手方へこちらの要求を伝えたり、相手方からの回答を受け取ったりといった、相手方との直接的なやりとりは全て弁護士が行います。具体的には、弁護士は代理人に就任後、まず初めに「受任通知」という、弁護士があなたの代理人に就任したことを知らせる書面を相手方へ送ります。その際に、「今後は代理人に対して連絡をしてください。ご本人には連絡をしないでください。」といったことを伝えます。このように、弁護士が代理人となることで、ご自身で相手方と直接やりとりをする必要がなくなり、相手方との交渉時のストレスを軽減することができます。

慰謝料の増額交渉

弁護士に相手方との交渉の代理人をご依頼いただいた場合は、相手方に対して、こちらが慰謝料を請求する理由や背景を法的な視点から整理しながら説明し、相場よりも高い金額から提示をします。このように、弁護士が代理人となることで、単なる感情論ではない慰謝料の増額交渉が可能になります。

支払う必要が無い慰謝料を支払うリスクの軽減

相手方に離婚を切り出して慰謝料を請求した時、逆に相手方からも慰謝料を請求されることは、そう珍しいケースではありません。もっとも、このように相手方からも慰謝料を請求された場合、そもそも慰謝料請求の理由自体がなかったり、請求している金額が高額に過ぎたりすることもよくあることです。弁護士に相手方との交渉の代理人をご依頼いただいた場合であれば、理由なく請求された慰謝料や高額すぎる慰謝料については弁護士が見抜き、その旨相手方に指摘して、支払いに応じない旨表明したり、金額を減額するよう主張したりと必要な対処を行います。したがって、支払う必要が無い慰謝料を支払うリスクは低減されます。

面倒な書類作成や裁判手続などを一任することができる

相手方が慰謝料を支払うことにすんなりと合意すれば難しいことはないのですが、現実的には、そのようにすんなりと解決するケースはそう多くはないのが実情です。そうすると、慰謝料を支払うことを拒否したり、こちらが提示した慰謝料を支払うべき理由を否定したりする相手方に対しては、こちらの言い分が法律的に正当であることを書面によって主張したり、裏付けとなる証拠を示したりする必要が生じます。この場合、弁護士があなたの代理人に就任していれば、そのような面倒な書類作成を弁護士に全て行ってもらうことができます。さらに、話し合いの結果無事に合意することができた場合、法的に正式な書面(典型的には、公証役場を利用して作成する公正証書という書面)を作成することがおすすめされるところ、代理人の弁護士にはこうした書面の作成も依頼することができます。

また、万が一交渉で解決せずに訴訟を提起せざるを得なくなった場合、訴訟の代理人も引き続きご依頼いただければ、煩雑・複雑な裁判手続を弁護士に一任することができます。

このように、代理人の弁護士は、慰謝料の請求権を行使する場面を全面的にサポートします。

慰謝料請求に関するお悩みの方は弁護士法人なかま法律事務所へ

本記事では、慰謝料請求が可能な離婚原因についての一般的・典型的な考え方をご説明しました。もっとも、ここまでお読みいただいた方の中には、熟年離婚のケースに当たる方、本記事で紹介している事柄以外を理由に慰謝料請求をすることを検討されている方、既に相手方から「慰謝料は払わない」と言われてしまった方等、様々なお困りごとを抱えていらっしゃる方もおられると思います。

弊所の離婚・夫婦関係・慰謝料請求の法律相談では、皆様の個別のお悩みやご不安に対して、弁護士とスタッフが一丸となって対応し、適切なアドバイスをさせていただきます。平日18時までのご相談は無料で受付をしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)