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浮気相手への慰謝料請求のポイントとは?弁護士が解説

2023.08.29
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パートナーが浮気をしていることが分かった時、その相手に慰謝料請求をしたいと考えることは、決しておかしなことではありません。それでは、具体的にどのようなケースであれば、また、どのような方法を取れば、慰謝料を請求することができるのでしょうか。

本記事では、浮気相手への慰謝料請求のポイントについて、弁護士が解説します。

浮気相手へ慰謝料を請求できるケース

法律上、パートナーの浮気相手に慰謝料を請求するためには、いくつか乗り越えなければならないハードルがあります。典型的には、以下の3点が挙げられるでしょう。

浮気相手との間で性行為・性交渉がある

一般論として法律上慰謝料請求を行うためには、請求の相手方があなたの法律上の権利又は法律上保護される利益を侵害したといえる必要があります。この点、「パートナーが浮気をした」というケースでは、浮気相手と一緒に食事をしただけ、デートをしただけという場合や、浮気相手と身体的接触があったとしても性行為・性交渉までには至っていない場合は、浮気をされた側の法律上の権利又は法律上保護される利益を侵害したとまではいえないと解釈されています。そのため、浮気相手に対して慰謝料請求をする前には、必ずパートナーと浮気相手が性行為・性交渉をした(=不貞行為があった)事実があるということまで確認し、その裏付けとなる資料をできる限り多く集めておくようにしましょう。

不貞行為の時点で浮気をしたパートナーと婚姻関係/内縁関係を結んでいる

請求の相手方があなたの法律上の権利又は法律上保護される利益を侵害したといえる必要があるという観点からは、パートナーと浮気相手の不貞行為の時点で、あなたとパートナーとが婚姻関係/内縁関係を結んでいるという事実が存在する必要があります。なぜなら法律上は、事実婚も含めた「婚姻関係にある」ことではじめて、婚姻関係にある当事者同士が、お互いに第三者との間で性的な関係を持たないようにして、平穏な婚姻生活を維持する義務を負うことになると考えられているためです。したがって、法律婚の場合であれば戸籍謄本があれば「婚姻関係にある」事実の立証はできる一方、事実婚の場合は、例えば

①同居して住民票の続柄を「妻(未届)」「夫(未届)」としていることや、
②内縁の配偶者を健康保険の被扶養者にしていること

等の間接的な資料から立証していく必要があります。

浮気相手に故意・過失がある

さらに、法律上慰謝料請求を行うためには、浮気相手がパートナーとの間で性行為・性交渉に及ぶことによって、慰謝料請求をする側の法律上の権利又は法律上保護された利益を侵害するのだということを知っていたか、知ることができた、といえる必要もあります。つまり、浮気相手があなたと浮気をしたパートナーとが婚姻関係/内縁関係にあることを知っていたか、知ることができたという事実を、その裏付けとなる資料によって示す必要があります。

浮気相手に慰謝料を請求する方法

浮気相手に慰謝料請求をするために乗り越える必要のあるハードルを乗り越えているとして、実際に浮気相手に慰謝料を請求するためにはどのような方法を取れば良いのでしょうか。以下の項目では、浮気相手に慰謝料を請求するための方法について解説します。

書面の送付による交渉

浮気相手に慰謝料を請求するための方法として最もポピュラーかつ選択しやすい方法が、書面を送付することによって浮気相手と交渉をすることです。この点、通常の郵送方法よりやや料金はかかりますが、「内容証明郵便」という方式によって書面を送付することが一般的です。なぜなら、内容証明郵便として書面を送付することによって、「何月何日に、あなたが浮気相手に対して、パートナーとの不貞行為を理由とする慰謝料を請求した」ということが後から容易に立証できるためです。後述のとおり、浮気相手がパートナーとの不貞行為を認めず慰謝料の支払いを拒否する場合等は、訴訟という手段によって解決を図らざるを得なくなります。こうした時に、内容証明郵便を予め送付して交渉することを経ることで、もし訴訟において裁判官が「不貞行為はあった」と判断した場合、「請求をされる側(浮気相手)は不貞行為を認めなかった≒噓を吐いたので、悪質性がある。だから認められる慰謝料は増額すべきである。」というように、浮気相手が噓を吐いたことを理由に慰謝料を増やす、という結論につなげることができる可能性があります。

相手と対面で交渉

他方で、相手と対面で交渉する方法はあまりお勧めできません。理由としては、

①口頭のやりとりであり基本的に記録に残らないため、後からどのような交渉をしたのかが分からなくなる

②交渉の態様によっては逆に相手方から脅迫された等の言いがかりをつけられる可能性がある

という2点が挙げられます。この点、①については録音すればよいのではないか、とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、録音データは②の証拠になる可能性もあり(話し合いの内容だけでなく、その時の口調等も分かる)、「諸刃の剣」であるといえます。特に、浮気相手に慰謝料を請求する場面においては、請求する側の方は(当然のこととは思いますが)冷静さを失いがちです。そのため、ご自分では「脅迫していない」と思っていても、第三者からすると「脅迫である」と評価できてしまうことはままあります。

したがって、相手方との間で無用な争点を増やさないためにも、対面で交渉する方法は推奨できない、ということになります。

裁判の中で請求

確かに、裁判、すなわち民事訴訟を提起するということは、浮気相手への慰謝料請求の手段の一つになります。しかし、法律実務では、いきなり民事訴訟を提起するということは滅多にありません。なぜなら、訴訟では自らの主張の裏付けとなる証拠をきちんと提出する必要がある等、請求される側だけでなく、請求をするこちら側にとっても多大な労力を必要とする手続きなので、可能な限り避けた方が望ましいためです。また、裁判所側も日々膨大な数の紛争を処理しているため、真に裁判所を介入させないと解決が困難な紛争にリソースを集中させるようにしなければ、回りまわって私たち市民が受ける司法サービスの質の低下につながりかねないという側面もあります。

したがって、民事訴訟を提起して慰謝料請求することは、基本的に交渉・話し合いで解決ができなかった場合の最終手段ということになります。

浮気・不倫による慰謝料の相場

それでは、浮気相手に慰謝料を請求する場合、具体的な金額はいくらを設定すればよいのでしょうか?

結論からご説明すると、具体的な金額の設定について何か法律で決められているとか、明確な基準がある訳ではありません。というのも、慰謝料を支払うことで救済が図られるのは目に見えない精神的な苦しみであり、その正確な大きさはご本人にしか分からないからです。

明確な金額の基準がない代わりに、実務では「このような事案であれば、普通の人ならこれくらいの怒りや苦しみを感じるだろう」という経験則によって、慰謝料の金額が決められています。具体的には、不貞行為の具体的な態様、不貞行為の相手の人数、属性、不貞行為をしていた期間、回数、頻度、その他事例ごとに様々な要素を考慮することになります。また、過去に類似する事案があった場合、その事案でいくらの慰謝料が認められたか、という点も考慮されることが多いです。

こうして形成されていった相場は、「多くの事例では100万円前後、時折高額な事例で300万円程度が認められることもある」といったものかと思います。

浮気相手に慰謝料請求する際の注意点

浮気相手の連絡先の把握

大前提になりますが、浮気相手の身元がわからないことには物理的にその人にコンタクトを取ることができず、慰謝料の請求をすることもできません。また、浮気相手に書面を送付する可能性や訴訟にまで至ってしまう可能性を踏まえると、例えば「浮気相手のSNSアカウントだけは知っている」というのでは不十分であり、正確な①氏名、②住所を把握する必要があります。

既にパートナーから慰謝料を受け取っている場合

同じ不貞行為を理由として、既にパートナーから慰謝料を受け取っている場合は、さらに浮気相手から慰謝料を受け取ることは難しくなります。

法律上、ある1つの不貞行為について責任を負うのは不貞行為を行った側の配偶者とその不貞行為の相手の2名と考えられているため、どちらか一方がその1つの不貞行為を理由として発生する慰謝料の全てを支払った場合、それ以上に慰謝料を請求できる法律的な理由は失われるので、支払っていないもう一方に対しては請求をできないということになるからです。

もっとも、パートナーが慰謝料を支払った経緯次第では、なお浮気相手に慰謝料を請求できる余地があります。というのも、パートナーが支払った慰謝料が「不貞行為」ではなく「不貞行為、あるいはその他の行動もひっくるめて、そのパートナーのせいで離婚に至ったこと」を理由とするものであれば、パートナーが慰謝料を支払った根拠と浮気相手が負う責任が必ずしも一致しないことになるため、一致していない部分については浮気相手に慰謝料を請求することができる、という理屈になります。

慰謝料請求の時効

最後に、浮気相手に慰謝料請求をする場合は、「消滅時効」という制度にも注意をする必要があります。具体的には、法律の規定(民法724条)により、

・不貞行為があったということ及び浮気相手の氏名を知った時から3年間を過ぎると慰謝料請求ができなくなる

・不貞行為それ自体があった時から20年間を過ぎると慰謝料請求ができなくなる

と決められています。20年間という時間はともかく、3年間という時間は意外とあっという間です。したがって、パートナーと浮気相手が不貞行為をしていることや、その浮気相手の氏名、住所が判明した場合は、できる限り早く慰謝料請求をするか否かを決断すべきといえるでしょう。

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以上、本記事ではパートナーの浮気相手に対する慰謝料請求について解説しましたが、このような慰謝料請求の場面では、理論的にはどのような場合であれば請求が認められるのか、現実にはどのような方法で請求すればよいのか、相手に提示する金額はどれくらいが妥当なのか…等々、迷いどころがたくさんあると思います。さらに、こうした迷いどころは、個々の状況や事情次第で最適解が変わってくる厄介さもあります。そのため、お一人で悩まれず、早い段階から弁護士によるそれぞれの具体的な状況、事情を踏まえた専門的な判断を加えることを強くお勧めします。

弊所では、離婚事件や慰謝料請求事件の経験豊富な弁護士とスタッフが、あなたのお悩みに寄り添い、解決に全力を尽くします。平日18時までの初回相談は無料でお受けしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)