離婚「知っトク」ブログ

離婚における解決金とは?取り決め時の注意点等について弁護士が解説

2023.08.31
  • お金のこと

離婚をする際には、お金のやり取りをすることになるケースが多いです。支払われるお金の名目として、慰謝料や財産分与といったものがあります(みなさんも聞いたことがあるのではないでしょうか。)。実は、そのようなお金の名目として、「解決金」というものがあります。今回は、この解決金について、弁護士が解説します。

離婚における解決金とは

「解決金」とは、文字通り紛争を解決するために支払うお金のことです。これに対して、「慰謝料」とは、相手が被った精神的苦痛を回復するために支払うお金のことです。解決金と慰謝料の一番の違いは、法的根拠の有無です。慰謝料は、不法行為(民法709条)という法律上の規定に基づき支払われるお金であり、損害賠償という性質があります。しかし、解決金は特に法律上の規定がありません。そのため、解決金を支払うか支払わないかはもちろん、どのような趣旨でいくらの解決金を支払うかなど、すべて当事者間で自由に決めることができます。なお、解決金と似たような言葉に、「和解金」というものがあります。解決金と和解金はほとんど同じ意味で使われますが、強いて違いを挙げるとすれば、解決金は訴訟に至る前の交渉や調停で紛争を終了させる際にお金を支払う場合に使われる名称であるのに対し、和解金は訴訟を和解で終了させる際にお金を支払う場合に使われる名称であることが多いです。

解決金が発生するケース

先ほどご説明したとおり、解決金に法的根拠はありません。当事者が解決金を支払いたいと思えば支払うことが可能です。ただ、一般的には以下のような場合に解決金が支払われることが多いです。

紛争を早期に終結させたい場合

解決金を支払うことによって、相手方はお金を手に入れることができ、経済的な利益を手に入れることになります。相手方に「うまみ」を感じさせることによって、早期に紛争を終結させようというインセンティブが相手方に生じます。特に、相手方が経済的理由により離婚を拒絶している場合には、解決金の支払いが相手方にとっては強い魅力と感じられるでしょう。また、「現段階で離婚に応じてもらえるのであれば、解決金を支払う(逆にいえば、現段階で提示している離婚条件での離婚に応じないのであれば、以後解決金は支払わない)」と主張すると、相手方はいま離婚に応じた方がよいとより感じやすくなります。解決金が使われるケースとしては代表的なものといえます。

自分の非を認めたくない場合

先ほどご説明したとおり、解決金は法的根拠がありません。これに対し、慰謝料には不法行為(民法709条)に基づく損害賠償という性質があります。ということは、仮に慰謝料としてお金を支払った場合、そのお金は損害賠償金と評価されることになります。損害賠償金は、自分の行為に違法性がある場合に発生するものですので、慰謝料を支払うということは、自分が違法なことをしたことを認めることにつながってしまします。例えば、自分は不貞行為をしていないのに、相手方がこちらの不貞行為を理由として慰謝料の支払いを求めてきたときに、相手方に慰謝料としてお金を支払ってしまうと、自分が不貞行為をしたことを認めたと捉えられかねないのです。場合によっては、このことが自分にとって不名誉なこととして周囲に認知される可能性もあります。このようなことを防ぐために、相手方に対し支払うお金の名目を「解決金」としておくことが重要である場面もあります。

他の名目によるお金の支払いを一括で解決する場合

離婚が決まった際には、様々な費用の清算が必要になることがあります。代表的なものとしては、婚姻費用を支払っていた場合における、未払婚姻費用の清算が挙げられます。このようなお金の清算をする場合に、一つ一つ計算した上で項目を作ることもできますが、清算すべき項目が多く、一つ一つ項目を挙げることが煩雑な場合があります。このような場合に、解決金という名目で全てのお金を一体的に解決することで、細かい話を省き、スムーズに離婚を成立させることができます。解決金は、このような場面で使われることもあります。

解決金のメリット・デメリット

解決金が発生する類型的なケースは今まで見てきたとおりですが、解決金を支払うことによって、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?メリットとデメリットとしては、それぞれ以下のような点が挙げられます。

メリット

離婚が成立しやすくなる

先ほどご説明したとおり、解決金の支払いによって金銭的な利益を相手方に提示すれば、離婚を拒否している相手方が離婚に応じる可能性があります。特に、不貞行為やDVといった典型的な離婚原因がないケースでは、訴訟に至るまで離婚が争われたり、訴訟においても離婚が認められなかったりする可能性がありますが、このような場合でも、解決金の支払いによって離婚が成立する可能性が生じてきます。

トータルで相手方に支払う金額が減る

婚姻費用を支払い続けている場合には、解決金を支払うことで離婚を成立させることによって、それ以降の婚姻費用を支払う必要がなくなります。例えば、仮に婚姻費用を月に10万円支払っており、調停や訴訟での離婚成立の場合には1年以上時間がかかることが見込まれるといった状況では、解決金として100万円を支払って直ちに離婚することにより、数十万円の金銭的コストを削減することができます。このように、解決金を支払った方がトータルでは安く離婚を成立させることができることもあります。

柔軟な解決が図れる

解決金は法的根拠がないので、金額等の設定は柔軟に行うことができます。何らかの責任に基づくものでもないため、解決金を支払ったからといって後に不利益が発生することもないといえます。離婚協議が大詰めを迎えたとき、最後の調整をするために解決金を利用することも考えられます。

デメリット

高額な金額を請求される可能性がある

解決金は特に法的根拠がないので、当事者が自由に金額を設定できるということは、相手方が法外な金額を請求する可能性も生じてきてしまいます。通常の損害賠償金等であれば、何らかの根拠に基づいた計算によって妥当な金額を主張したり、他の事例と比較して相場といえる金額を主張したりすることもできますが、解決金の場合にはそれが難しく、交渉がなかなか進まない可能性があります。

場合によっては後に新たな紛争を引き起こす可能性がある

解決金という名目でお金を支払った場合、慰謝料や財産分与といった別の名目のお金が支払われていないとして、離婚成立後に新たにお金の支払いを要求される可能性があります。そうなると、せっかくお金を渡して紛争を解決したと思っていたのに、また紛争への対処をしなければならなくなる上、別途お金を支払わなければならなくなる可能性もあります。

解決金を取り決める際の注意点

以上のようなメリットとデメリットを踏まえた上で、解決金の取り決めをすることになった場合に注意すべき点には、どのようなものがあるでしょうか?

相手が離婚に消極的な場合におけるリスク

相手が離婚に消極的な場合、解決金の支払いを提示しても意味がない可能性があります。特に、不貞行為を理由とした慰謝料の支払いを相手方が求めている場合に、こちらが解決金としてお金の支払いを提案したとしても、相手方はあくまで名目を慰謝料とすることを求める可能性もあり、解決金である限り離婚に応じないという対応をされる可能性があります。

支払いが可能な額での合意

解決金の支払いは、あくまでご自身が支払うことができる金額での支払いで合意しましょう。紛争の早期解決を急ぐあまり、相手方の法外な金額での解決金の支払いに応じてしまうと、後で支払い不能になってしまい、新たな紛争の火種になりかねません。また、仮に後述するような公正証書や、調停で解決金の支払いに合意した場合、解決金の支払いがない場合に強制執行をされる可能性もあり、預金や給料が差し押さえられるといった事態が生じるリスクもあります。

後から追加請求されないような書面の作成

解決金を支払う際には、支払う解決金が離婚に際し生じる一切の権利義務を清算するためのものであることを明確にしておきましょう。合意書、公正証書、調停調書で解決金の支払いを明記する際には、「当事者双方は、本件離婚に関し、本書面に記載する事項以外のほか、何らの債権債務が存在しないことを相互に確認し、今後は財産分与・慰謝料など名目を問わず、互いに何らの財産その他の請求をしない」といった内容の条項を必ず入れるようにしましょう(なお、このような条項を「清算条項」といいます。)。

弁護士に相談するメリット

解決金の支払いを検討する際に、弁護士に依頼するメリットとして、以下のような点が挙げられます。

解決金の適正額が分かる

解決金は当事者で自由に決められるとはいえ、あまりに高額な解決金の支払いに応じることはできないと思います。高額な解決金を請求された際には、当事者の収入や、慰謝料などの他の名目で支払う場合いくらぐらいが相場なのか等、何らかの根拠を参照しつつ、適正な金額を検討し、相手方に主張反論すべきです。しかし、これをご自身だけで行うことは難しいといえます。そもそも参照すべき根拠が何であるか判断することが難しいですし、その根拠に基づいて金額を算出する場合も、他の事例を検討することができないため具体的な金額の算出が難しいからです。弁護士に依頼した場合、弁護士が過去の事例を参照しつつ、一定の根拠に基づき解決金の適正額を算出することができますので、法外な解決金の支払いを求められたとしても、それが適正なのかどうかを判断することができる上、そのような金額の解決金の支払いを拒否することもできます。

相手方との交渉を代行してもらえる

解決金の支払いに関し、相手方と交渉する必要があるところ、この交渉をご自身だけで行うと膨大な時間的コストがかかると共に、肉体的・精神的に疲弊してしまうと思われます。特に離婚事件の場合、お互いに相手方とこれ以上一緒に居たくないから離婚するのですから、そのような相手と直接のやり取りをすることは苦痛に感じられると思われます。弁護士に依頼した場合、相手方とのやり取りは全て弁護士に任せることができますので、ご自身が直接相手方とやり取りすることは基本的になくなります。特に、お仕事をしている方の場合、日中は仕事に行かなければならないと思います。このような場合、自分の時間を離婚交渉・解決金支払交渉に割く必要がなくなるので、この点は大きなメリットといえるのではないでしょうか。また、弁護士という第三者を間に挟むことにより、当事者の感情的な対立を防ぎ、冷静に交渉を進めることが期待できます。その結果、当事者間だけで離婚交渉・解決金支払交渉をする場合と比べ、早期に事件が解決することも期待できます。

離婚協議書も作成してもらえる

離婚交渉・解決金支払交渉が合意に達したら、離婚協議書を作成することを強くおすすめします。離婚協議書の中に、先ほどご説明した清算条項を入れておくことによって、後の紛争を予防することができるからです。ただし、せっかく離婚協議書を作成したとしても、その内容や形式に不備がある場合には、離婚協議書の効力や内容の解釈に争いが生じる可能性があり、作成した離婚協議書が無意味になってしまう可能性もあります。弁護士に依頼した場合、離婚交渉・解決金支払交渉のほかに、離婚協議書の作成も併せて依頼することができます。弁護士によって作成された離婚協議書は、内容・形式共に適切なものになりますので、後の紛争を防ぐことが期待できます。なお、離婚協議書は当事者間で作成することができますが、公正証書の形式で作成することもできます。公正証書は、公証役場で作成する書面であり、作成に際し多少の時間と費用(実費として数万円)が掛かってしまいますが、高い証拠力を有します。また、公正証書の中に、「債務者は,本証書記載の金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨陳述した」 といった文言(このような文言を「執行受諾文言」といいます。)を入れることにより、別途訴訟を提起しなくても強制執行をすることができるようになります。仮に、解決金等のお金を貰う側である場合には、公正証書の形式で離婚協議書を作成した方がより安心できるといえます(逆に、お金を支払う側の場合には、わざわざ公正証書の形式で離婚協議書を作成する必要はないですが)。

離婚における解決金についてお悩みの方は弁護士法人なかま法律事務所へ

離婚における解決金についてお悩みの方は、ぜひ一度弁護士法人なかま法律事務所へご相談いただくことをおすすめします。弊所の強みは以下の点です。

離婚事件に特化した事務所

弁護士法人なかま法律事務所は、全国でも有数の離婚事件に特化した法律事務所です。年間約400件の離婚事件のご相談を承っており、所属弁護士の離婚事件の経験は豊富です。解決金を支払うことにより解決したケースや、解決金を受け取ることができたケースなど、過去の成功事例のノウハウが蓄積されています。

事件処理体制の確立

弁護士法人なかま法律事務所は、事件処理の体制を確立しています。一つの事件に主担当の弁護士が1名、副担当の弁護士が1名の合計2名で事件の解決にあたります。また、一つ一つの事件ごとに、担当の事務員を割り当てています。このような事件処理体制を確立していることによって、事件の処理をスムーズかつ適切に行うことができるようにしています。

コミュニケーションツールの充実

弁護士法人なかま法律事務所は、ご依頼者の方とのコミュニケーションツールを多数ご用意しております。弊所との連絡手段として、直接ご来所いただく方法や、郵便、お電話、メールといった従来型の連絡手段の他に、zoomによるオンラインでの連絡手段や、事務所公式アカウントを用いた、LINEによる連絡手段もご用意しております。ご依頼者様が一番便利なツールを使いコミュニケーションを図ることにより、迅速かつご依頼者様に合った意思疎通が図れるよう努めています。

このように、弁護士法人なかま法律事務所は、離婚事件に特化した法律事務所として、解決金のお支払いを含めた、ご依頼者様の離婚事件全体の解決を全力でサポートさせていただきます。初回のご相談は無料(ただし、平日17時以降に開始するご相談及び土曜日・日曜日・祝日のご相談は有料です)で承っておりますので、離婚における解決金についてお悩みの方は、お気軽に弁護士法人なかま法律事務所へご相談ください。