離婚「知っトク」ブログ

離婚成立前に別居をしている場合の財産分与の進め方

2023.11.24
  • お金のこと
  • 財産分与

離婚をする場合の最も基本的なやり方、すなわち、役所に離婚届を出すという方法での離婚では、「そもそも離婚をするということ」と「未成年のお子様がいる場合はそのお子様の親権者は誰か」の2点のみが決まります。しかし、離婚をする際に決めておいた方がよいことは、実は他にもあります。その代表的なものが、財産分与についてです。

本記事では、離婚に至るケースとしては非常に典型的なケースである、離婚成立前に既に別居を開始しているという場合に、どのように財産分与を進めていくべきか、ということを解説します。

別居後における財産分与の基準日とは

具体的に財産分与の話し合いを進めるためには、まずは、日々目まぐるしく出たり入ったりする財産の中で、話し合いの対象となる財産は何かということを確定する必要があります。これがいわゆる「財産分与の基準日」という考え方です。財産分与の基準日について理解するためには、以下のとおり、少々コツが要ります。

財産分与の原則的な考え方について

そもそも、離婚の際に財産分与の話し合いができることの根拠は、法律上、夫婦は離婚する時に他方に対して財産分与を請求することができる旨規定されているという点にあります(民法第768条)。このように、れっきとした権利として定められている背景には、離婚によって夫婦が人間関係を清算することに伴って、経済的なところも清算しようという考え方があります。具体的には、夫婦がお互いに協力して(働きに出たり、家事を行ったりして)築いた財産(原則として、婚姻後に夫婦が得た財産は全てこれに該当します)を、その協力の度合いは原則同じくらいであると考えて、折半しようという理屈です。

別居後における財産分与の基準日=別居した日

以上のように財産分与の考え方を理解すると、「財産分与の話し合いの対象となる『夫婦がお互いに協力して築いた財産』は、いったいいつの時点の財産をいうのか?」という問いに対する答えもおのずと出てきます。つまり、夫婦がお互いに協力しなくなった時点=別居した日に存在する財産を対象とすれば、公平に財産分与ができるという結論になります。

したがって、別居後における財産分与の基準日は、別居した日、ということになります。

別居後に財産分与する手順

以上、財産分与の基本的な考え方、まず話し合いにおいて決めるべき基準日についてと、別居後であればその基準日は別居した日になるということをご説明しました。以下では、こうした理論的なことを踏まえた具体的な財産分与の手順についてご説明します。

離婚前に別居が先行する場合の財産分与におけるポイント

財産状況の把握

上記「財産分与の原則的な考え方について」でご説明したとおり、財産分与の対象は婚姻後に夫婦双方が得た財産全てです。そのため、まずはこの対象財産について、別居した日時点で具体的に何が存在するのかを把握しましょう。典型的には、不動産、自動車、預貯金、株式、解約返戻金付きの保険、退職金が対象になります。

財産分与の対象とはならない財産が含まれているかの確認

次に、財産分与の対象となる財産の中に、例外的に財産分与対象とはならない財産が含まれていないかを確認しましょう。この「例外的に財産分与対象とはならない財産」は専門用語では「特有財産」と呼ばれており、夫婦が協力して築いたわけではない財産、すなわち独身時代から持っていた財産や両親等の親族からの財産が該当します。

注意点としては、これらの特有財産は得た当時の全ての分ではなく、あくまで基準日=別居した日の時点で残っている分のみを財産分与の対象から外せるということです。また、あくまで位置づけは例外であるため、その財産が特有財産であることを裏付ける資料が必要になる場合があります(典型的には、相手方が特有財産であることを否定した場合等です。)。

相手方の隠し財産の調査

財産分与の話し合いをするためには、自分の財産状況だけでなく、相手方の財産状況も知る必要があります。そのため、お互いに自分が管理する財産を開示し合うことになるのですが、時には自分の管理する財産を隠そうとする人がいます。もし相手方がそのような財産隠しをしていることが疑われる場合は、話し合いでの解決が難しくなる可能性があります。すなわち、法的には、相手方が隠していることが疑われる財産の管理者(例えば、預貯金であれば相手方が口座を持っていることが疑われる銀行の支店、株式であれば株主名簿の管理人)に問い合わせをすることができるという規定が存在してはいますが、その規定を使えるのは離婚訴訟の段階になって以降であるためです。

そうすると、話し合いの最初の段階では、むしろ相手方が将来的に財産隠しをする場合に備えるということになるでしょう。具体的には、相手方が口座を持っている銀行名及び支店名、証券会社、契約先の保険会社、勤務先といった情報を確保することが重要です。

財産の総額と折半額を計算し、誰が誰に対していくら分与すべきかを確定する

財産を開示した後は、それぞれの財産の総額を算出します。この点、不動産や自動車等はそのままだと分けることができないため、業者に査定を取ってもらう等して話し合い時点の価値を出す必要があります。

総額を算出した後は、元々の夫婦双方の管理している財産の総額と照らし合わせて、より大きい額の側から他方に対して分与がなされるということになります。具体的には、夫が1000万円分、妻が500万円分の財産を管理していたとして、総額1500万円の折半額は750万円となるので、夫から妻に対して750万円-500万円=250万円を分与する、ということになります。

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以上、本記事では離婚成立前に別居をしている場合の財産分与の進め方について解説しました。弊所の離婚法律相談では、皆様の個別のお悩みやご不安に対して、弁護士とスタッフが一丸となって対応し、適切なアドバイスをさせていただきます。平日18時までのご相談は無料で受付をしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。