離婚「知っトク」ブログ

財産分与で株式が欲しい!そのために知っておきたい注意点とは?

2024.01.30
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  • 財産分与

離婚に伴って、それぞれの当事者は相手方に対して財産分与を求めることができます。この点、当事者のどちらか、あるいは双方が株式を所持している場合、その株式も財産である以上、財産分与の対象となる可能性があります。そして、後でご説明するとおり、財産分与の中で株式の分与を求める場合、その株式が上場しているか、それとも非上場かという点で結論が変わり得る場面がたびたび見受けられ、他の財産にはない厄介さがあります。

そこで、本記事では、財産分与において株式の分与を求める場合の注意点について解説します。

財産分与の対象となる株式とは

財産分与の対象となる財産の基本的な考え方

そもそも、離婚に伴って財産分与を求めることができる権利とは、夫婦が離婚によって関係を清算するに伴って、それまでに経済的に協力して築いた財産も折半して清算しようという趣旨で認められています。したがって、そのような経済的な協力がなくなったといえる時点に存在する財産、具体的には、別居時(※離婚前に別居している場合)あるいは離婚時に存在する夫婦名義の財産は原則全てが財産分与対象となります。

もっとも、原則には例外があって、別居時あるいは離婚時に存在する夫婦名義の財産であっても、婚姻前から有している財産や親族から譲り受けた財産(これらを特有財産といいます。)は財産分与の対象外となります。ただし、ある財産が特有財産に当たるかどうかは、話し合いの現場で争いになりやすいポイントです。もし争いになった場合、その財産が特有財産に当たることを立証する必要が生じることもある点は注意が必要です。

対象となるケース

株式の場合も、上記の基本的な考え方は当てはまります。つまり、別居時あるいは離婚時に夫婦のどちらか、あるいは双方が保有する株式は、原則財産分与の対象となります。具体的には、結婚後に買い付けた上場株式や、結婚後に夫婦のどちらか、あるいは双方で設立した会社の非上場株式が財産分与対象となる株式の典型例となります。

対象にならないケース

また、特有財産の議論についても、同様に当てはまります。例えば、親族が経営している会社の非上場株式を所有している場合は、それはその親族との縁故ゆえのことであって、夫婦で協力して築いた財産というわけではないと考えられるので、この株式は特有財産に当たるといえます。

他方、上場株式を所有している場合で、婚姻前から同じ証券会社の口座を持っていて、その口座で婚姻前から株式を所有しているという場合は注意が必要です。婚姻前から何ら入れ替わることなく同一銘柄の株式を同一数保有しているのであればともかく、婚姻後にその口座に資金を入金したり、口座内の株式の構成に変化があったりする場合は、夫婦が協力して得たお金で株式を運用し資産を維持したと評価され、そうすると、特有財産ではないという結論につながるためです。

いずれにせよ、特有財産の議論の性質上、非上場株式の方が、財産分与の対象とはならない場合に当てはまる傾向があります。

株式の財産分与の方法

それでは、夫婦のどちらか、あるいは双方が所有している株式が財産分与の対象となる場合、具体的にはどのように分与されることになるのでしょうか。

財産分与の内容を確定し、書面化する

そもそも、まずは株式も含めて財産分与の対象となる財産は何か、これらの財産はいくらと評価されるのかということを話し合い、財産分与を行うことそれ自体やどのような方法で財産分与を行うかということを合意する必要があります。そのうえで、合意した内容を後から蒸し返されないために、離婚協議書等の書面を作成することが推奨されます。

この点、株式については、上場株式、非上場株式のいずれについても、株式そのものの所有権を移転する内容の合意をするケースはあまりありません。これは、理論としてそうなっているというより、他方にとってその株式そのもの自体に魅力があるケースが少ないこと、現金として分与を受ける方が便宜であることといった、現実的な理由であると考えられます。

という訳で、基本的には、株式は、現金としての価値を算出したうえで、他の財産の現金としての価値と足し合わせて夫婦名義の財産の価値の総合計を算出し、それを折半して分け合う=財産を多く所有している方から他方に対して現金を支払う、という合意をし、そのように書面化することが多いです。

上場株式の場合

それでは、株式の現金としての価値を算出するためには、どのように考えればよいのでしょうか。まず、上場株式であれば、算出は比較的容易です。というのも、市場で株価が形成されているため、この株価を参考にすればよいためです。この点、株価は毎日変わりますから、価値を算出するための基準となるある一定の日付・時点を決める必要があります。実務上は、これは離婚成立時と考えられていますが、離婚前に財産分与の話し合いをする場合は物理的に離婚成立時の株価は分かりようがないため、離婚成立時になるべく近い時点で、当事者同士で合意をすることで進められています。

非上場株式の場合

他方、非上場株式の場合は、市場での株価は存在しないため、別の方法によって価値を算出しなければなりません。この点、非上場株式の株価の評価方法については、実務上は様々な方式がとられており、明確かつ簡便な基準は存在しないのが実情です。以下、詳述します。

非上場株式の株価の評価方法

評価の方式について

実務でとられている株価の評価方式としては、大きく、

①類似業種比準価額方式:会社と類似する業種の事業を営む会社の株式に比準して評価する方式

②純資産価額方式:会社の総資産価額から債務や法人税等を控除した純資産価額を発行済株式数で割った額とする方式

③配当還元方式:会社の配当金額を発行済株式数で割った額とする方式

があります。どの方式で評価するかによって価値は変わり得るため、裁判所や実務の現場では、それぞれの事情に応じて合理的と考えられる方式を使い分けています。

裁判例や実務の傾向

裁判所や実務の現場での使い分けには、明文の法律や基準があるわけではありません。ただ、大まかな傾向としては、会社の規模によって、大会社であれば類似業種比準価額方式、中会社であれば類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用、小会社は純資産価額方式、その他特例的な場合に配当還元方式、となっていると捉えられています。

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以上、本記事では財産分与において株式の分与を求める場合の注意点について解説しました。弊所では、財産分与交渉の経験豊富な弁護士とスタッフが、あなたのお悩みに寄り添い、解決のために全力でサポートをさせていただきます。平日18時までの初回相談は無料でお受けしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。