離婚「知っトク」ブログ

再婚と養育費

2021.09.02
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はじめに

親権を得た元配偶者が再婚した場合や連れ子がいて再婚をした場合,養育費はどうなるのかという相談がよくあります。

今回は4つの場合について解説します。

1 親権者が再婚した場合

親権を得た元配偶者が再婚しただけでは,養育費減額事由にはなりません。

養育費が減額されるのは,再婚相手と子が「養子縁組」をした場合です。

養子縁組をしてはじめて,養親と養子との間に法律上の親子関係が生じ,養親である再婚相手が子に対する扶養義務を負うからです。子が再婚相手と養子縁組をすると,養親(再婚相手)が子に対して『第一次的な』扶養義務を負うと考えられています。

そのため,養親(再婚相手)に資力があって第一次的な扶養義務を果たせる場合には,実親は養育費を支払う必要がなくなる,つまり養育費はゼロになります。

ただし,養育費を減らす・支払い義務を消滅させるには,実親が家庭裁判所に養育費減額請求調停の申立てを行う必要があります。何も手続きしないで払わなくてよくなるわけではありませんので,ご注意ください。

なお,再婚相手と子が養子縁組をしても実親との法律上の親子関係がなくなる訳ではありません。例えば,実親が死亡すれば子に相続権はありますし,面会交流が直ちにできなくなるわけでもありません。

2 再婚した場合の養育費は誰が払うべきか

上記のとおり,再婚しただけで再婚相手が子に対して扶養義務を負うことはなく,養親をしてはじめて扶養義務を負うことになります。

元配偶者から養育費減額請求をされないように,養子縁組をしない方がよいのではないかと考える方もいるかもしれません。

ただ,養子縁組をしないと再婚相手が亡くなった場合に子が相続権を得られなくなることや,再婚相手と別居して婚姻費用(離婚するまでの生活費)を請求する場合に,再婚相手に子の分の生活費を請求できないというデメリットがあります。

養子縁組をすべきかどうかは,元配偶者・再婚相手と子との関係や,元配偶者・再婚相手の資力等を考えて決めることになるでしょう。

3 連れ子がいる場合に再婚相手と離婚すると,養育費はどうなるか

養子縁組の有無によって,再婚相手と離婚した場合の養育費がどうなるかは変わってきます。

  1. 養子縁組をしている場合

再婚相手と離縁すれば実親,離縁しなければ養親(再婚相手)が払う

→再婚相手と離婚したとしても,養子縁組が解消されるわけではありません。養子縁組を解消するならば,別途手続きをする必要があります。養子縁組を解消すると,再婚相手(養親)の扶養義務がなくなるため,養育費は,実親に請求していくことになります。離婚後も養子縁組を解消しないのであれば,再婚相手(養親)に養育費を請求することができます。

2. 養子縁組をしていない場合

実親が支払う

→養子縁組を解消した場合と同様,再婚相手は扶養義務を負っていないため,実親に養育費を請求していくことになります。

3.離縁について 

① 協議離縁

離縁は協議により行うことができます。

子が15歳未満の場合には,離縁後に親権者となる実親と再婚相手(養親)との間で協議を行います(民法811条2項)。

養子離縁届に,養親及び養子(15歳未満の場合は親権者)が署名捺印し,本籍地又は所在地の役所に提出すると,離縁することができます。

② 調停離縁

協議によって離縁の話し合いが解決しない場合は,家庭裁判所に離縁調停の申立てをして,話し合いにより調停が成立すれば,離縁することができます。

調停が不成立となった場合,裁判所は一切の事情を考慮して,調停に代わる審判をして離縁を認めることもできます(家事事件手続法284条1項)。

しかし,当事者が異議を申立てれば審判の効力が失われてしまいます(同法286条5項,287条)。

③ 裁判上の離縁

調停・審判でも離縁できない場合には,訴訟提起が必要になります。

訴訟で離縁が認められるためには,次のいずれかの事由が必要です(民法814条1項)。

①他の一方から悪意で遺棄されたとき

②他の一方の生死が3年以上明らかでないとき

③その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき

訴訟提起後,判決前に,相手方が離縁に応じたり,和解により離縁が成立したりすることもあります。

なお,調停や判決等で離縁が成立しても,戸籍に反映させるために役所への届出は必要です。

4 非親権者(養育費を支払っている側)が再婚した場合,元配偶者側との間の子の養育費は減額するのか

再婚をすると,再婚相手に対して扶養義務を負うことになります。

再婚相手に十分な収入がない(稼働能力がない)場合には,再婚相手への扶養義務が現実化するため,養育費の減額が認められる余地があります。

また,再婚相手との間に子が生まれた場合も,被扶養者が増えることになるため,養育費の減額が認められる可能性があります。再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合も,同様です。

なお,養育費について取り決めた後に額を増減するには,一般的に①から④の事由が必要となります。

①合意の前提となっていた客観的事情に変更が生じたこと

②その事情変更を当事者が予見できなかったこと

③事情変更が当事者の責めに帰すことができない事由によって生じたこと

④合意どおりの履行を強制することが,著しく公平に反する場合であること

養育費の取り決めから短期間の間に再婚したり,再婚相手との間に子が生まれたりした場合には,上記のいずれかの事由が認められないとして,養育費の減額が認められない場合もあります。

  • 今回は,再婚と養育費について取り上げました。

再婚にからんで養育費が問題となる場合,養育費額の増減が認められるのか,増減額の計算方法はどうなるのか,といった点は事案によって変わってきます。

再婚と養育費について実際にどうなるのか疑問を持たれている方は,一度弁護士に相談されてはいかがでしょうか。