離婚「知っトク」ブログ

協議離婚する際の慰謝料請求条件や方法を解説

2023.07.03
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協議離婚とは

夫婦が離婚する方法は、全部で4つあります。協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚です。このうち、協議離婚は日本で最も件数の多い離婚方法であり、令和2年に届出がされた離婚のうち、協議離婚によって離婚が成立した件数は全体の88.3%を占めます(「厚生労働省 令和4年度離婚に関する統計の概況 結果の概要」より)。協議離婚とは、夫婦がお互いに離婚に合意したとして、離婚届に署名した上で役所に離婚届を提出するという、みなさんが想像する方法で行われる離婚です。なお、協議離婚以外の調停離婚、審判離婚、裁判離婚は、すべて裁判所を介して行う離婚であり、程度の差はあっても、すべて離婚について争いがある場合に選択される離婚方法です。

協議離婚で慰謝料を請求できるケース

「調停離婚、審判離婚、裁判離婚と異なり、協議離婚はお互いが納得済みで離婚する以上、相手方に対して慰謝料の請求をすることはできないのではないか?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、協議離婚で合意しているのは、あくまで離婚することそのものです。協議離婚することと慰謝料を請求することは矛盾するものではないので、「慰謝料を請求したいけど、それはそれとして協議離婚をする」という選択をすることは可能です。したがって、協議離婚でも慰謝料を請求できるケースは存在します。では、具体的にどのようなケースだと、協議離婚で慰謝料の請求することができるのでしょうか?

(元)配偶者への請求

協議離婚の際の慰謝料請求の相手方として、まず(元)配偶者が考えられます。(元)配偶者が不倫(法的には不貞行為といいます。)、DV、モラルハラスメント等をしていた場合、(元)配偶者に対し慰謝料を請求することができます。

不貞行為の相手への請求

(元)配偶者が不貞行為をしていた場合、不貞行為の相手方に対しても慰謝料を請求することができます。

離婚原因別の慰謝料の相場

慰謝料請求の理由には様々なものが考えられますが、具体的な理由ごとに、慰謝料の相場はある程度決まっています。

①不貞行為の場合

不貞行為を理由とする慰謝料請求の場合、相場は100万円から300万円ほどであると考えられます。

②DVの場合

DVを理由とする慰謝料請求の場合、相場は100万円ほどであると考えられます。ただし、DVの程度によっては、病院での診察代や治療費、怪我をしていたことにより働けなくなってしまった間に得られるはずであった収入などが実際の損害として発生します。これらの損害も合わせると、請求できる額はさらに増加します。

③モラルハラスメントの場合

いわゆるモラルハラスメントを理由とする慰謝料請求の場合、相場は100万円ほどになると考えられます。ただ、モラルハラスメントに該当する行為には多くの種類があることから、相場と大きく乖離した慰謝料が認められる可能性もあります。

④その他のケースの場合

①から③以外にも、慰謝料請求の理由には様々なものが考えられますが、①から③のような典型的な慰謝料請求の理由と比べるとその他のケースは類型化が難しく、相場についても個別具体的な判断になってきてしまいます。精神的苦痛を金銭的に評価することの困難さも伴い、高額な慰謝料請求は難しいと考えられます。

協議離婚での慰謝料請求の流れ

協議離婚の際に慰謝料を請求する場合の流れは、次のようになります。

証拠の収集

慰謝料を請求するためには、その理由となる事実を証明する証拠が必要になります。まずは証拠を確保しましょう。どのような証拠を集めればよいのかについて、一例としては以下のようなものが考えられます。

①不貞行為の場合

まず、(元)配偶者や不貞行為の相手方が不貞行為の事実を認める旨の発言を録音した音声データや、署名のある誓約書などがあれば、不貞行為の証拠になります。また、不貞行為の相手方とのメール、LINEの履歴があれば、そのやり取りの内容から不貞行為が立証できる可能性があります。また、ホテルに不貞行為の相手と出入りしている写真、ホテルを利用したことを示すレシート、性交渉の様子を撮影した動画や写真なども証拠になり得ます。

②DVの場合

怪我の写真や病院の診断書、DVがあったときの室内の写真(部屋が荒らされていれば暴力行為が推認できる可能性があります)、DV時の音声データ、目撃者の証言などが証拠になり得ます。

③モラルハラスメントの場合

モラルハラスメントに該当する行為を証拠化することはやや難しいのですが、(元)配偶者からのメールなどから、(元)配偶者の言動がモラルハラスメントに該当すると評価できる場合もあります。また、特定の日にどのようなモラルハラスメント行為があったかを記録したご自身の日記やメモなども、証拠になる可能性があります。

一般的に、証拠は時間がたてばたつほど収集しにくくなりますので、慰謝料を請求したいとお考えになったらすぐに証拠を集めておくべきです。その際、相手方に慰謝料請求のための証拠収集をされていると勘づかれると、証拠隠しが行われる可能性もありますので、相手方に気づかれないように慎重に行動する必要があります。また、証拠が消滅したり隠滅されたりすることを防ぐために、別途コピーやバックアップを取っておいたり、簡単に他人が入ることのできない場所に証拠を保管しておくなどの対策も必要でしょう。

相手方と直接話し合う

証拠を収集したら、相手方と直接話し合って交渉しましょう。相手方が非を認め、慰謝料の支払いに応じるのであれば、具体的な金額、支払時期や方法について交渉を進めることになります。なお、交渉の際には相手方から後に脅迫されたなどと言われないために、交渉の場所には配慮が必要です。(元)配偶者の場合にはご自宅でもよいと考えられますが、不貞行為の相手方の場合、二人きりの状況で交渉することは避けた方が無難です。また、交渉時の言動にも注意しましょう。怒鳴ったり名誉棄損的な言葉を使ったりするのは避けましょう。

文書にて伝達

別居している場合や不貞行為の相手方に対して請求する場合など、直接会って交渉することには抵抗がある場合には、文書で慰謝料を請求することも考えられます。その場合でも、直接話し合う場合と同じく、脅迫などの疑いを持たれないように、文書の記載内容には注意しましょう。

(元)配偶者や不貞行為の相手方が慰謝料の支払いを拒む場合

直接交渉や文書での交渉によっても、(元)配偶者が慰謝料の支払いを拒む場合には、次に取るべき選択肢として2つのルートが考えられます。1つは、とりあえず協議離婚をして別途慰謝料請求訴訟を提起するルートです。一刻も早く離婚して再スタートを切りたいとお考えの方にはメリットがあります。2つ目は、慰謝料の問題が解決するまで離婚には応じないとして、協議離婚そのものを断念して調停離婚や裁判離婚に移行するルートです。こちらのルートの場合、(元)配偶者が早期離婚を希望している場合に、譲歩を引き出すことが期待できる点がメリットです。

一方、不貞行為の相手方との間で、交渉での解決が難しい場合には、すぐに訴訟を提起された方がよいでしょう。

協議離婚にて慰謝料を回収するためのポイント

協議離婚において、慰謝料の支払いに相手方が応じた場合に、実際に慰謝料を回収するために大切なポイントは、合意内容を証拠化しておくことです。口約束で終わってしまうと、後になって「慰謝料を支払うなどという合意はしていない」などと言われ、再び紛争が発生してしまう可能性があるからです。

離婚協議書の作成

慰謝料を支払うという合意内容を書面化する方法として、離婚協議書を作成するという方法が考えられます。離婚協議書は当事者だけで作成することが可能ですので、作成の手間・時間・費用が少なくて済みます。一方、弁護士に依頼せずに当事者だけで離婚協議書を作成した場合、記載内容に法的な誤りがあったり、不充分な点があったりすると、新たな紛争の火種になりかねないというリスクがあります。

作成した離婚協議書を公正証書へ

慰謝料を支払うという合意を書面にまとめる場合に最もふさわしい方法は、合意内容を公正証書にまとめる方法です。公正証書とは、公証役場で公証人という人と協議しながら作成する書面のことで、文書の偽造などのリスクがない点が1つ目のメリットです。また、慰謝料を支払うという合意を公正証書にまとめておけば、仮に慰謝料が支払われなかった場合でも、ただちに強制執行(いわゆる差押えです)の手続に進むことができることも大きなメリットです。合意をまとめた書面を公正証書の形式で作成していない場合、慰謝料の支払いを求めるためには別途訴訟を提起する必要がありますが、公正証書に「慰謝料の支払いがない場合には強制執行されてもよい」旨の記載がされてある場合には、訴訟提起をせずにすぐに強制執行をして、慰謝料を回収することが可能なのです。

公正証書の場合、離婚協議書とは異なり公証人との協議や手数料の負担があるためコストはかかってしまいますが、できれば合意内容は公正証書にまとめておきたいところです。

協議離婚に関するお悩みの方は弁護士法人なかま法律事務所へ

協議離婚の際に慰謝料を請求する場合、相手方との交渉が必要になりますが、交渉をご自身で行うとなると、そもそも慰謝料が発生するケースなのか、慰謝料の金額の相場はどれくらいなのか等について、ご自身で難しい判断をしなければなりません。また、相手方との交渉で精神的な負担を感じてしまうこともあり得ます。弊所は慰謝料請求の交渉に関しノウハウのある法律事務所ですので、ご依頼者の方それぞれの個別具体的な事情にそって解決までの見通しをお示しします。また、交渉は弊所の弁護士が代理人として行いますので、ご自身で相手方と交渉する必要もなくなり、さまざまな負担を軽減することが可能になります。慰謝料請求に関するお悩みはもちろん、財産分与など、慰謝料請求以外の離婚に関係する紛争もご相談いただけます。平日の10時から18時までの初回相談(1回1時間程度。最終17時開始)は無料で承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。