離婚「知っトク」ブログ

離婚調停で高額の慰謝料を請求する方法とその流れを徹底解説!

2023.07.28
  • 離婚手続
  • 慰謝料

離婚調停で話し合うこと

離婚調停とは、裁判所内で行う話し合いの手続きです。事柄の性質上、離婚について取り決めをする場合は、いきなり裁判―すなわち訴訟で四角四面に決めてしまうより、協議をして当事者が自分の意思で約束をする方が良い解決につながる場合が少なくありません。そこで、法律上、離婚裁判、すなわち訴訟を起こす前にまずは離婚調停で話し合いをすべきことが定められています。

調停は、一般的な話し合いと異なり、調停委員という裁判所の職員がそれぞれの当事者から一人ずつ話を聞き、話し合いを仲介するというのが大きな特徴です。そのため、離婚調停では、自らの主張を調停委員に理解・共感してもらうことが重要です。離婚調停では、そもそも離婚するかしないかということの他、離婚するとした場合の条件について話し合いをします。典型的には以下のものが考えられます。

慰謝料

離婚に至る経緯の中に暴力や不貞行為などの不法行為があり、法律上の損害賠償請求として慰謝料の請求ができる場合は、当然、慰謝料の支払いを求めることが話し合うべき事柄の一つになるでしょう。この点、多くの場合は、慰謝料を支払うことそれ自体、または慰謝料の金額のどちらか、あるいはその両方が争いになります。

子どもの親権

未成年の子どもの親権者は離婚する際に必ず決める こととされています。そのため、ご夫婦の間に未成年のお子様がいる場合は、どちらがお子様の親権者になるかも話し合う必要があります。

養育費

ご夫婦の間に未成年のお子様がいる場合は、親権者と合わせて養育費についても話し合う必要があります。この点、養育費の金額は、家庭裁判所が定める標準算定表という表(またはこの表の元になった計算式)に夫婦双方の年収、お子様の年齢、人数を照らし合わせることで、法律上の最低ラインとなる額が決まってきます。そのため、基本的には、この表によって算出された内容をベースに話し合っていくこととなります。具体的には、養育費の標準算定表では大学や私立学校の学費、高額の医療費といった特別の出費は考慮されていないため、このあたりのことは別個に夫婦間で話し合いをして、双方が合意をする必要があります。

面会交流

ご夫婦の間に未成年のお子様がいる場合は、お子様と非親権者(お子様と別居している親)との面会交流についても話し合う必要があります。一般的に、面会交流を実施することはお子様の心身の成長、発達のために重要と考えられています。したがって、離婚調停においては、基本的には面会交流を実施する方向で話し合われることが多いです。

財産分与

財産分与とは、婚姻期間中に形成された夫婦の共有財産を夫婦関係(婚姻関係)の終了に伴って清算することで、原則は別居日等の特定の時点に存在する夫婦の財産全てを折半します。ただし、独身時代から有している財産や両親等から贈与された財産は、財産分与の対象から除外することができる可能性があります。

年金分割

配偶者が厚生年金に加入していた期間がある場合、その納付記録(保険料の支払い実績)を分割する制度です。0.5という按分割合、つまり折半が原則です。離婚調停において年金分割を取り決めるためには、「年金分割のための情報通知書」が必要です。

離婚調停で慰謝料請求できるケース

以上、離婚調停で話し合われる典型的なトピックを挙げました。ここからはその中でも重要度の高い、慰謝料請求について解説をします。

弁護士の元に離婚調停に関して相談にいらっしゃった方が、慰謝料請求をご希望されるケースは非常に多いです。しかし、残念ながら、法律の世界では、離婚に至ったからといって必ずしも慰謝料の請求が認められる訳ではありません。
では、どのような事情があれば、それによって被った精神的苦痛に対して慰謝料を請求できるのかというと、それはひとえに配偶者に慰謝料を支払うべき法律上の責任が発生している場合に他なりません。具体的には、以下のような場合が挙げられます。

不倫・浮気など不貞行為をされた

配偶者が第三者との間で性行為に及んだ場合、それは「不貞行為」に当たり、慰謝料請求の理由となります。不貞行為は、不貞行為をされた側の「婚姻生活を平穏に送る権利・法的利益」を侵害する違法な行為と考えられているため、不貞行為をされた側の精神的な苦痛を救済するために慰謝料請求をすることが認められています。

DV、モラハラを受けている

そもそも物理的な暴力行為は違法な行為であるところ、配偶者からこうした物理的な暴力を受けた場合は当然慰謝料請求の理由となります。

他方、物理的な暴力はなくとも、人格を否定する言葉を投げかけたり、無視したり等の行為がある場合、このような言葉や態度による精神的な暴力も違法な行為であることには何ら変わりはありません。

したがって、これらのDV、モラハラ行為は慰謝料請求の理由となります。

悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居・協力扶助義務(民法752条)に違反する行為のことをいいます。具体的には、配偶者の生活費を負担できるだけの収入や資力があるにも関わらず一切生活費を負担しない、配偶者の住む家にも全く帰宅しないといった行為が該当します。このような行為も、法律で定められた義務に違反する違法行為ですので、慰謝料請求の理由となります。

セックスレス

セックスレスの原因が配偶者のどちらかによる一方的かつ合理的な理由のない性交渉の拒否にある場合は、そのような性交渉の拒否に対して慰謝料請求をすることができます。

離婚調停で慰謝料請求できないケース

以上、離婚調停で慰謝料請求できるケースについてご説明しました。他方で、以下のケースに当てはまる場合は、慰謝料請求は難しいと言わざるを得ません。

性格の不一致

離婚原因が単に性格の不一致にすぎない場合は、離婚に至ることについてどちらかが一方的に加害者でどちらかが一方的に被害者という訳ではない以上、法的には慰謝料の請求は認められません。

婚姻関係がすでに破綻している

配偶者が不貞行為をした場合でも、その不貞行為の前に婚姻関係が破綻していた場合は、慰謝料の支払いによって救済されるべき「婚姻生活を平穏に送る権利・法的利益」はないということになるため、慰謝料の請求は認められません。

離婚調停で慰謝料を交渉するメリットとデメリット

メリット

離婚調停で慰謝料を交渉する第一のメリットは、裁判所内という、法的な一般論や考え方のきちんと通用する場で話し合いができるということです。つまり、法律上は通用しない相手方の不合理な言い訳や反論については、裁判所側があなたの味方となって排除してくれることが期待できるのです。

また、調停で合意ができた場合、合意ができた内容は「調停調書」という形でしっかりと残されることになります。そのため、万が一相手方が合意したはずの金銭を支払わないということが起きても、強制的に支払いをさせる手段(強制執行)を選択できます。このことも離婚調停で慰謝料を交渉するメリットといえます。

デメリット

離婚調停で慰謝料を交渉するデメリットは、メリットの反対の側面といえます。つまり、こちら側も、“法外”な請求はできないことになり、法的な一般論としての相場の範囲内の金額に縛られます。慰謝料の相場観については、「慰謝料が請求可能な離婚原因とは?」の記事をご覧ください。

離婚調停で慰謝料を請求する流れ

離婚調停の申立

まずは、相手方の現住所を管轄する家庭裁判所に、離婚調停を申立てましょう。弁護士にご依頼をいただければ、弁護士の方で手続を進めます。ご自身で行う場合は、裁判所の窓口にて申立書類の書式の配布や、書き方等の説明を受けることができます。

調停をする日時の決定

申立て後、家庭裁判所から連絡があり、調停をするために裁判所を訪れるべき日時(「期日」といいます。)の調整が行われ、決定されます。決定後、相手方に当該日時を伝える書面と申立書の写しが郵送されます。

調停

期日当日は、はじめは待合室で待機することになります。その後、調停委員に呼び出され、調停室に案内されます。調停室では、2名の調停委員に対して自分の意見等を伝えていくことになります。こうしてある程度調停委員と話をした後、相手方と交代します。1回の期日の時間は2時間ほどなので、時間の許す限り、これを繰り返して話し合いを進めていくことになります。1回の期日で話し合いが終わらなかった場合は、日程調整のうえ、次回期日が指定されます。

離婚訴訟(離婚調停がまとまらなかった場合)

離婚調停は話し合いの手続であるため、どうしてもまとまらないということがあり得ます。そうなると、調停は「不成立」ということで終了してしまいます。

調停が不成立になった場合、離婚やそれに伴う慰謝料を請求するためには、離婚訴訟を提起する必要があります。

離婚訴訟を提起した後も、和解によって解決をする途が絶たれる訳ではありませんが、最終的には裁判官が判決という形で紛争を決着させることになります。この段階に至ると、過去にどういった事情があったのかということをいかに証明できるかが重要となってきます。したがって、例えば離婚の条件で慰謝料の支払いを求める場合は、早いうちから、慰謝料の請求ができる法的な根拠(上記の不貞行為や暴力行為等)の裏付けとなる資料をできる限り揃えておくことをおすすめします。

離婚調停で慰謝料請求をするときの2つの注意点

配偶者と不倫相手からの二重取りは不可

法律上、不貞行為を理由とする慰謝料請求は、「1つの慰謝料請求の権利を配偶者と不貞相手の両方または片方に主張する」という構造となっています。そのため、権利として請求が認められた慰謝料の全額を、配偶者と不貞相手のどちらか片方から支払ってもらった場合は、それ以上をもう片方から支払ってもらうことはできません。

慰謝料請求には3年の時効

法律上、不貞行為をされた側(=慰謝料を請求する側)が、「不貞行為があった」ということと「不貞相手は誰か」ということを知った時から3年間が経過すると、慰謝料を請求することができなくなってしまいます(なお、不貞行為それ自体があった時から20年間を経過しても慰謝料請求はできなくなります。)。

そのため、不貞行為があったこと、不貞相手が誰かということを把握したら、早めに行動を起こす方が良いということになります。

離婚後でも慰謝料請求できることがある

他方、配偶者に対する請求であれば、「配偶者の行為によって離婚に至った」ことに対する慰謝料請求と構成することで、離婚から3年以内であれば、離婚後でも慰謝料請求をすることができます。

慰謝料請求に関するお悩みの方は弁護士法人なかま法律事務所へ

以上、本記事では離婚調停の流れ、離婚調停で慰謝料を請求する場合の基本的な知識をまとめてご説明しました。弊所では、離婚に伴う慰謝料請求の経験豊富な弁護士とスタッフが、あなたのお悩みに寄り添い、解決のために全力でサポートをさせていただきます。平日18時までの初回相談は無料でお受けしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。