離婚「知っトク」ブログ

離婚協議書の内容に記載しておくべき事項とは

2023.07.31
  • 離婚手続

離婚協議書とは

夫婦が当事者間の話し合いでする離婚を、協議離婚といいます。協議離婚の場合、離婚届を提出するだけで離婚をすることができます。しかし、夫婦が離婚する場合、離婚と同時に取り決めなければならないことはたくさんあります。そこで、離婚と同時に取り決めるべき事項について、離婚届とは別に書面でまとめる必要があります。離婚の条件についてまとめたこの書面のことを、離婚協議書といいます。

離婚協議書の必要性と効果

離婚と同時に取り決めるべき事項について、当事者間で話し合いがまとまったのであれば、わざわざ書面を作成する必要はないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、離婚条件についての合意を口約束でまとめてしまうと、後に相手方から「そんな約束はしていない」などと言われてしまい、約束したことを守ってもらえなくなってしまう可能性があります。離婚協議書を作成しておけば、離婚後に離婚条件について揉めることがなくなります。また、離婚条件を書面にまとめることで、当事者間に離婚条件について自覚を促し、約束を守ろうという気持ちを強く持ってもらうこと期待できます。

離婚協議書の内容にて定めるべき事項

離婚協議書に定めておくべき内容として、以下のものが考えられます。

①離婚の合意、離婚届の提出者、提出日時

離婚協議書は通常離婚届を提出する前に作成するものです。そこで、離婚に合意したことと、離婚届をいつまでに夫婦のどちらが提出するのか記載しておくとよいでしょう。

②親権者の指定

夫婦に子がいる場合、離婚後に子の親権者に夫婦のどちらになるのか決め、これを記載しておきましょう。

③養育費

子の養育費を毎月いくら支払うのか、毎月の支払時期、支払方法、いつまで支払うのかについて取り決め、離婚協議書に記載しましょう。なお、養育費は子が20歳になるまで支払うのが原則ですが、当事者間の話し合いにより大学卒業までなど、その終期を変更することも可能です。また、私立学校や大学の学費などについて、別途負担することを取り決めることもあります。子がまだ小さく、具体的に学費等の取り決めができない場合には、将来事情が変わった場合には別途協議する旨の条項を入れておくことが考えられます。

④面会交流

子と同居していない親が、子と定期的に会うことを、面会交流といいます。子と会う頻度(毎月1回など)を定めておくのが一般的です。また、具体的な日時、場所、方法なども併せて定めておくことが考えられます。なお、すでに順調に面会交流ができている場合や、特に面会交流について争いがない場合には、「都度協議する」とだけ定めることも考えられます。

⑤財産分与

夫婦が結婚している間に形成した財産は、離婚の際に清算する必要があります。これを財産分与といいます。財産分与は、互いの財産を折半するのが原則です。不動産、預貯金、株式、解約返戻金のある保険、退職金などが財産分与の対象となります。分与の仕方は、対象となるすべての財産を金銭的に評価して現金で支払ったり、現物を引きわたしたりするなど様々です。また、不動産を持っていたり、退職金を分与したりする関係で支払う金額が大きい場合、一括で支払うのではなく、分割で支払ったり、まとまったお金が用意できる時期まで分与を猶予したりするなどの取り決めもすることができます。そのため、財産分与に関しては、分与対象財産、その分与方法、分与時期などについて定めることになります。

⑥年金分割

当事者がサラリーマンであり厚生年金に加入している場合、将来的に年金を受給するときに、当事者間で受給できる年金に差が出ることがあります。そのため、受給する年金額を決める要素である今までの保険料の納付記録を分割することで、当事者の受給する年金額を調整する制度を年金分割といいます。離婚協議書で年金分割について合意したことを定めておけば、それを利用して年金分割の手続ができますので希望する場合には条項を入れておきましょう。なお、国民年金は年金分割では扱われません。また、iDeCo等の年金保険などは年金分割ではなく、財産分与の手続きで処理します。

⑦慰謝料

慰謝料を請求したい場合には入れておきます。なお、相手方が有責な行為をしていないと主張している場合には、慰謝料という名目ではなく、「解決金」というような名目で記載することも考えられます。

⑧その他の取り決め

①から⑦の典型的な取り決めの他にも、連絡先が変わった場合互いに連絡しあうといった条項、互いに子に対し相手方の悪口を言わないといった条項、離婚に関する経緯を互いにむやみに第三者に話さないといった条項を設けることも考えられます。当事者間で希望する場合には入れておくとよいでしょう。

⑨清算条項

①から⑧で定めたこと以外には、当事者間に権利や義務がないことを定める条項です。この条項を入れておくことで、新たに相手が慰謝料や財産分与などを請求してきたとしても、すでに解決済みであると反論することができます。必ず入れておきましょう。

離婚協議書を公正証書にするメリットと手順

離婚協議書は、当事者間だけで作成することができる書面です。一方、離婚条件に関する取り決めを公正証書の方式でまとめることも可能です。公正証書とは、公証役場で公証人という人と協議しながら作成する書面のことで、離婚協議書に比べ以下の点でメリットがあります。

メリット

①文書が真正に成立したことを証明できる

文書は、第三者が偽造して作成するおそれがあるので、文書が真正に成立したことを証明できなければ、証拠力はありません。しかし、公正証書は公証役場という公の場所で、公証人をいう公務員がその職務上作成する公文書なので、真正に成立したことが推定されます。この推定を覆すことは極めて困難であるため、公正証書は強い証拠力を有するものです。

②強制執行が可能になる

仮に、相手方が離婚協議書に記載された義務を果たさなかった場合、こちらの権利を実現するためには、いったん訴訟を提起して勝訴判決を得てから強制執行(差押え)をする必要があります。しかし、訴訟は時間もお金もかかります。一方、離婚協議書を公正証書にし、かつ公正証書に「この公正証書に記載されている義務を果たさなかった場合、訴訟を経ないで強制執行されても構わない」といった内容の条項を加えておくことで、相手方が義務を果たさなかった場合に、すぐに強制執行等をすることができます。なお、ここで訴訟をしないで強制執行をすることができるのは、金銭的な義務に限ります。財産分与として自宅を引き渡してもらうといった条項を入れていた場合、これは金銭的な義務ではないので、ただちに強制執行をすることはできません。しかし、金銭による財産分与や養育費、慰謝料などの条項で効果を発揮しますので、相手方の経済状況や支払に対する態度に不安がある方は公正証書によって離婚協議書を作成することを検討するとよいでしょう。

公正証書の作成手順

公正証書は、以下の手順で作成されます。

①公正証書の内容を決める

上記①から⑨の各条項について、当事者間で話し合って条項内容を決めていきます。自分が不利にならないようにするのはもちろんですが、法的に無効な内容の条項と判断されるおそれがないかなどもチェックが必要です。例えば、「慰謝料として1億円を支払う」といった内容の条項は、当事者の収入等にもよりますが、公序良俗(民法第90条)に反し無効となる可能性があります。

②提出資料の準備

公正証書を作成するために提出する必要のある資料を準備します。⑴印鑑登録証明書と実印、

⑵運転免許証と認印、⑶マイナンバーカードと認印、⑷住民基本台帳カード(写真付き)と認印、⑸パスポート、身体障害者手帳または在留カードと認印のいずれかを本人確認のために用意するほか、戸籍謄本、(財産分与の対象に不動産が含まれている場合)不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)および固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書、(年金分割をする場合)年金分割のための年金手帳等が必要になります。

③公証役場に公正証書作成を申し込む

資料を準備したら、公証役場に公正証書の作成を申し込みます。申し込み後、資料の確認をされることになります。なお、申し込みから実際に作成手続に入るまでにある程度時間がかかりますので、まずは公証役場に電話をして予約状況の確認をしておくとよいでしょう。

④公正証書の内容を公証人に伝え、公証人が公正証書を作成する

①で決めた公正証書の内容を公証人に伝えて、公証人から質問や内容の訂正等をされた後、公証人が公正証書を作成します。

⑤公正証書に署名捺印する

公証人が作成した公正証書の内容に問題がなければ、当事者(又は代理人)がそれぞれ公正証書に署名押印します。公正証書の原本は公証役場に保管され、当時者には同一内容の正本が交付されます。

離婚協議書に関するお悩みの方は弁護士法人なかま法律事務所へ

後に紛争を蒸し返されないために、離婚協議書を作成することは極めて重要です。しかし、協議書の内容に不備があると、当事者にどのような権利と義務が発生しているのか明らかでなく、せっかく作成した離婚協議書が無意味になってしまうおそれがあります。法的に効力のある離婚協議書を作成するためには、専門家のアドバイスをもとに離婚協議書を作成することが大切です。なかま法律事務所は、離婚事件に特化した法律事務所ですので、離婚事件の経験が豊富で、離婚協議書の作成ノウハウも蓄積されています。また、弊所には、当事者間で離婚についての条件をお決めいただいた場合、その条件をもとに離婚協議書を作成するプランがございます。さらに、当事者間でどのような取り決めをしたらよいか等、条件の設定に悩んでいる場合には、弁護士によるアドバイスをさせていただくプランもございます。ご相談いただければ、ご希望のプランによって、適切な離婚協議書の作成を承りますので、離婚協議書の作成でお悩みの方はぜひ一度ご連絡ください。