離婚における内容証明郵便とは?送付時、受取時双方のポイントを解説
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目次
内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、「誰から誰宛てに、いつ、どのような書面が郵便物として送付された」という事実を、郵便局が証明するサービスのことをいいます。なお、内容証明郵便のサービスを利用するためには、必然的に一般書留サービスを利用する必要があるため、郵便物の引き受けから宛先への配達までの過程も記録されます。
離婚における内容証明郵便の効力とメリット
それでは、離婚に向けた話し合いの場面では、内容証明郵便はどのように活用されるのでしょうか。この点、法律上は、「請求のためには内容証明郵便を送らないといけない」とか、「内容証明郵便を送れば請求が認められる」といった直接的、明示的な規定がある訳ではありません。他方、法律実務では、あらゆる場面で過去の事実を証拠によって立証する必要が生じます。このような時に、「誰から誰宛てに、いつ、どのような書面が郵便物として送付された」という事実を証明できる内容証明郵便をあらかじめ送付しておくことが法律実務上意味を持ってきます。具体的には、内容証明郵便の送付には以下のようなメリットが挙げられるでしょう。
送付するだけで慰謝料が支払われる可能性がある点
内容証明郵便として送付した書面を訴訟の場において証拠として提出することは珍しくありません。「誰から誰宛てに、いつ、どのような書面が郵便物として送付された」という事実を証明できるという内容証明郵便の効果からは、例えばその書面の内容が不貞行為を理由として慰謝料請求をする内容だったとすると、「その書面を作成した人が、書面を送付した日付の時点で、過去に不貞行為があったことを認識している」という事実の存在を証明することができるためです。
もちろん、証明できるのはあくまで「ある人が認識していた」事実にすぎないため、「不貞行為自体」という事実を証明できる訳ではありません。しかし、“火のない所に煙は立たぬ”というように、不貞行為が真実存在しているからこそ、ある人がその不貞行為の存在を認識したのだ、と言い得ることからは、「ある人が不貞行為を認識していた」事実からは、「不貞行為自体」という事実の存在を推測できる、ということになります。
このように考えると、内容証明郵便を送付することは、将来的にあり得る訴訟に向けた準備とも捉えることができます。そのため、内容証明郵便を受領した人の中には、訴訟に発展することを回避するために、直ちに内容証明郵便に記載されている請求に応じる人がいるのも頷けます。
なお、内容証明郵便の送付によって慰謝料が支払われた、というのは、このような結果論的な効果にすぎませんので、内容証明郵便を送付したからといって、そこに記載されている請求に応じなければならない法的義務が発生する訳ではない点は注意が必要です。
請求事実が記録として残る点
そもそも、理論的には、ある請求を口頭で行った場合であっても、法律的には有効であると考えられています。しかし、それはあくまで理論であって、現実の法律実務では、「いつ、誰が、誰に対して、どのような請求をしたのか」ということが記録として残る方法で請求を行うことが常識です。なぜなら、口頭のように、それが記録として残らない方法を取ると、後から「いつ、誰が、誰に対して、どのような請求をしたのか」ということが確認できないため、相手方との間で「言った、言わない」の争いになってしまうためです。このような無用な争点を増やさないためにも、記録として残る方法で請求をすべきなのです。
この点、内容証明郵便ではない形式の郵便やメール等でも記録として残ることには変わりないのだからそれでよいのではないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これらの方法をよくよく考えてみると、「相手方に郵便を送った」事実ないし「相手方にメールを送った」事実までは確実に後から確認できるとしても、「送った内容が何であったか」ということの確認は必ずしも容易ではありません。他方で、内容証明郵便であれば、書面の内容も含めて後からしっかり確認することができます。
このように、請求事実を記録として残すためにも、内容証明郵便は活用されています。
時効の完成猶予をすることができる点
法律上、請求できる権利があるにもかかわらず、その権利を行使しないまま所定の期間が経過した場合、もはやその権利が消滅するという制度(消滅時効)があります。他方、法律では、この期間が経過する前に特定のアクションを起こすことで、期間を延長させたり(時効の完成猶予)、ゼロから数え直しにさせたり(時効の更新)することができます。そして、前者の効果が得られるアクションの中に、「催告」というものがあり、これが、内容証明郵便による請求であると捉えられています。したがって、消滅時効が迫っている中でも、とりあえず内容証明郵便によって請求をすることで、その請求をできる権利が消滅してしまうのを食い止める効果(時効の完成猶予)が得られます。
しかし、1点注意していただきたいのが、この効果は1回限りのものであり、かつ、延長できる期間は6か月間のみである点です。他方、訴訟を提起する等の時効をゼロから数え直しにさせる(時効の更新)アクションを取れば、時効についての差し迫った心配ごとはなくなるため、内容証明郵便を送った後は、6か月以内に時効を更新するためのアクションを取れるよう、きちんと検討・準備しなければなりません。
内容証明時に送付する慰謝料請求文書で記載すべき事項と注意点
記載すべき事項
内容証明郵便に記載すべき事項は、上記の内容証明郵便を送ることの効果やメリットを踏まえたものになります。
具体的には、①差出人と受取人の基本的な情報(氏名、住所をはじめとした連絡先)、②何らかの請求をする場合は、その請求が法律上のものであることの説明(いかなる法律の何条に基づく請求か、その条文が請求をするために必要と定める条件を満たしていることの提示)、③金銭の支払いを求める場合は、いつまでに何円をどうやって支払う必要があるのか、という3点は記載をすべきでしょう。また、④交渉によって③の要求を変える可能性はあるのかということや、相手方が要求を拒否・無視する場合には訴訟を提起する可能性はあるのかといった、差出人(請求する側)の今後の方針についても記載をしておくとよいでしょう。
注意すべき点
内容証明郵便は、枚数が増えるごとに料金が加算されるシステムです。そのため、上記の記載すべき事項に絞って、なるべく簡潔に記載することが求められます。具体的な枚数としては、2~3枚以内に収めるべきです。
他方で、あまりに簡潔すぎたり、正確性に欠けていたりすることも問題です。誤字・脱字はないか、送付先の情報は正しいか、といった基本的なところはきちんとチェックしたうえで送付するようにしましょう。
内容証明郵便が届いた際の対応方法
内容が正しい場合
内容証明郵便として届いた書面の内容が正しくて、特段不服もないという場合、その書面に送り主の要求が記載されている場合(例えば、○○円を支払ってください、等)は、素直にその要求に応じてしまってよいでしょう。相手方の言いなりになることにはあまり良い気分がしないかもしれませんが、上記の内容証明郵便の使われ方を踏まえると、相手方もそれなりに本気なのは間違いありません。巻き込まれる必要のない紛争に巻き込まれないための行動が重要です。
内容が誤っている場合
内容が誤っている場合は、必ず、誤っている点を具体的に指摘した回答書面を作成して、書面内に締切が設定されている場合はその日までに送付しましょう。他方、書面を無視することは絶対にやってはいけません。無視をしても相手方は訴訟をしてくるだけでしょうし、訴訟を無視することは「相手方の言い分を認める」ことと同視されます。そうだとすると、結局、内容証明郵便を無視することは自分で自分を不利にすることにしか繋がりません。誤りは誤りだと指摘する勇気が、問題解決の近道になります。
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本記事では離婚における内容証明郵便について解説しました。内容証明郵便は法律実務において広く利用されているサービスですが、実際にご自身のみで利用しようとすると、どのような文章を書いて送ったらよいか分からないと戸惑ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。弊所では、内容証明郵便の書面案の作成のみも承っております。平日18時までの初回相談は無料でお受けしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。