離婚「知っトク」ブログ

離婚調停中に不貞行為が発覚した場合、慰謝料は請求可能?

2023.09.01
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様々な理由により離婚調停を行っていたところ、相手方の不貞行為が発覚したとしたら、「慰謝料を請求したい!」と思われる方が多いのではないでしょうか。今回は、離婚調停中に相手方の不貞行為が発覚したときの慰謝料請求について、弁護士が解説します。

不貞行為とは

そもそも、不貞行為とはどのような行為を指すのでしょうか?「不貞行為とは、配偶者以外の第三者と性交渉をすること」と捉えるのが基本的な考え方です。しかし、性交渉をしていなくとも、不貞行為と評価される可能性があります。たとえば、配偶者以外の第三者と同棲していたり、キスやハグなどの過度なスキンシップが行われたり、恋愛関係にない第三者に対し通常送ることが考えられないようなレベルの好意の表現がメール等でされていたりするなど、社会通念上婚姻関係を破綻させる可能性のある行為と評価できる行為は、性交渉がなくとも不貞行為と評価される可能性があります。

慰謝料請求可能なケース

基本的に、慰謝料と離婚は直接の関係がありません。慰謝料を請求するために離婚しなければならないわけではありませんし、離婚するために慰謝料を請求しなければならないわけでもありません。慰謝料の請求をするために必要な条件は、以下のとおりです。

不貞行為を証明する証拠がある

相手方が任意に応じてくれるのであれば、証拠がなくとも慰謝料の支払いを受けることは可能です。しかし、相手方が不貞行為の事実を認めない場合、不貞行為を証明する責任は慰謝料を請求する側にあるので、証拠により不貞行為があったことを証明する必要があります。例えば、次のようなものが証拠になり得ます。

不貞行為を撮影した動画・写真

性交渉中に、動画や写真を撮影しているケースがあります。これらのデータが、相手方のスマートフォン等に記録されていることがあるので、探すことができるようであれば調査してみましょう。

不貞行為があったことに言及した手紙、メール、LINE等のやり取り

不貞行為そのものに言及したやり取りや、不貞行為があったことを前提としたやり取りがある場合には、不貞行為を立証する証拠になり得ます。なお、メールやLINEの場合、ユーザー名が一目で誰を指しているのか分からないことがあります。そのような場合には、メールやLINEの当事者が誰であるのかを明らかにする証拠も必要です。

探偵業者の調査報告書

探偵業者が配偶者を尾行調査した結果、配偶者と第三者がホテルに出入りしている場面が撮影され、これが調査報告書として作成された場合、不貞行為を推認させる重要な証拠となります。ただし、探偵業者への依頼費用は高額になることが多く、最終的に回収することができた慰謝料額を上回ってしまい、費用倒れに終わってしまう可能性もあります。また、探偵業者の質は必ずしも担保されているものではなく、中には適格性に問題がある探偵業者もいることには注意が必要です。

不貞行為を認める旨の記載がされた誓約書などの書面

人は、自らに不利な事実を積極的に認めようとはしません。そのため、不貞行為を自ら認める旨の記載がある誓約書等の書面は、不貞行為を推認させる証拠になります。考えられる証拠の中でも、誓約書等の書面は事後的に作成することが可能であるという点もポイントです。

その他の証拠

ホテルのスタンプカードやクレジットカードの利用履歴に不貞行為をうかがわせる項目が記載されている場合や、性具や避妊具が配偶者の荷物等から見つかった場合にも、不貞行為を推認させる証拠になり得ます。ただし、これら単体では決定的な証拠とまではいえないため、①~④の証拠を集めておきたいところです。

婚姻関係が破綻した後の不貞行為でない

相手方が第三者との間で不貞行為をしていたとしても、不貞行為をした時点で夫婦が別居して全く交流がない状態になっているなど、婚姻関係が破綻していた場合には、慰謝料を請求することはできません。第三者と肉体関係を持つことによって、婚姻関係が破壊されることによる精神的苦痛が慰謝料の根拠となるところ、肉体関係を持った時点で婚姻関係が破綻していた場合、第三者と肉体関係を持ったことによって破壊される婚姻関係がその時点でもはや存在していなかったことになるため、精神的苦痛も発生しないと考えられるからです。

時効が成立していない

時効が成立してしまっている場合、相手方からの任意の慰謝料の支払いがない限り、慰謝料を請求することはできません。とはいえ、配偶者に対する慰謝料請求の時効は、離婚から3年以内です。離婚調停中に不貞行為が発覚したケースでは、時効の心配をする必要はないでしょう。

すでに慰謝料を請求しない合意をしていない

こちらも、離婚調停中に不貞行為が発覚した場合にはあまり心配する必要はないと考えられますが、慰謝料について何らの請求をしないといった合意をしてしまっていると、慰謝料の請求はできません。どちらかというと、慰謝料の請求をしたいと考えている場合には、現在進行している離婚調停で、「今後この件について一切請求しない」といった合意をして離婚調停を成立させることがないように注意する必要があるといえます。

一方が婚姻関係の継続を望んでいる場合

当事者の一方が婚姻関係の継続を望んでいる場合、慰謝料請求に何か問題は生じるでしょうか?

まず、こちらが婚姻関係の継続を望んでいる場合を考えてみます。その場合、相手方に対し、慰謝料を請求する実益はあまりないと考えられます。まず、こちらが婚姻関係の継続を希望しているということは、相手方が離婚を求めて調停を申し立てていることになります。その場合に、こちらは婚姻関係を継続したいと考えている一方、その相手方に対し慰謝料を請求してしまうと、相手方は快く思わないでしょうし、余計に婚姻関係は悪化してしまうと考えられます。また、婚姻関係を継続させる以上、夫婦の財布は一つであり、仮に相手方から慰謝料を支払ってもらったとしても、同じ財布に入っていたお金を単に移動させただけになってしまいます。相手方とは離婚せずに何らかの形で慰謝料が欲しいのであれば、配偶者ではなく不貞行為の相手方である第三者を相手に慰謝料請求をすべきでしょう。

次に、こちらは離婚を望んでいるが、相手方は婚姻関係の継続を求めていない場合は何か問題が生じるでしょうか?こちらのケースでは、ためらわず慰謝料請求をしてよいと考えられます。離婚してもよいと思っているのなら、相手方との関係が悪化しても自分にはもはや関係ありませんし、離婚後は財布が別々になる以上、受け取った慰謝料はしっかり自分の物として使うことができるからです。

慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

慰謝料請求を弁護士に依頼することには、以下のメリットがあります。

慰謝料請求に関し適切な法的主張ができる

慰謝料を請求するためには、慰謝料の発生原因となる事実を主張立証する必要があります。また、慰謝料をより高額にするためには、慰謝料を増額させる事由を過不足なく指摘する必要があります。さらに、こちらの主張に対し相手方が反論した場合、それに対する再反論も必要になります。仮に、弁護士に依頼せずにこれらの主張をしようとした場合、何が重要な事実で何がそうではないか、指摘すべき事実に漏れがないか、相手方の反論に対する有効な再反論になっているかなどの難しい判断を、適切に行うことが難しいです。しかし、弁護士に依頼した場合、法的知識のある弁護士が事件における主張立証の内容や方法を検討してくれます。また、交渉には駆け引きが必要であるところ、弁護士は相場や交渉の傾向

について熟知していますので、合意や和解がまとまるように交渉を進めることが期待できます。

時間や労力を節約できる

慰謝料請求の交渉をご自分で行う場合、相手方に対してご自分で連絡を取り、条件を提示して交渉する必要があります。しかし、ご自身で電話やメールをし、話し合いをすることには、想像以上に時間や手間がかかります。また、訴訟になれば、裁判所とのやり取りをする必要や法廷へ出向く必要もあります。しかし、裁判所は平日しか開かないので、お仕事や学校がある場合には休みを取って出廷しなければなりません。このように、ご自身で慰謝料請求の交渉や訴訟を行う場合、ご自身の時間の多くを犠牲にして労力を割かなければなりません。しかし、弁護士に依頼をした場合、相手方とのやり取りは全て弁護士を通して行うことができるので、ご自身で相手方とやり取りをする必要はなくなります。また、裁判所とのやり取りも、裁判所の実情を知っている弁護士が行うことでスムーズに進行することが期待できます。

精神的な負担が減る

慰謝料請求交渉・訴訟を弁護士に依頼する最大のメリットは、この精神的負担の軽減にあるといえます。特に不貞行為を原因とする慰謝料請求の場合、不貞行為が発覚したことによるショックは大きいことが多く、精神的に不調をきたすこともままあります。そのような状況で、相手方と慰謝料請求の交渉や訴訟を進めてしまうと、そのやり取りの中でさらに心が傷ついてしまい、心身共に疲弊してしまう可能性が高いです。最悪の場合、それ以上の交渉や訴訟の進行をすることができず、慰謝料請求をあきらめざるを得なくなる可能性もあります。弁護士に依頼した場合、具体的なやり取りは弁護士に任せることができるので、ご自身で辛い事実を全て確認する必要がなくなり、精神的な負担を少しでも軽くすることができます。

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弁護士法人なかま法律事務所は、離婚事件に特化した法律事務所です。離婚事件の年間相談件数は400件ほどお受けしており、所属弁護士は全員離婚事件の経験が豊富です。また、弊所は一つの事件に弁護士2名が携わることになっているほか、事件ごとに専属の事務員を配置するなど、事件の処理体制も確立しております。ご依頼者様との連絡を密にとり、ご依頼者様の疑問やご不安を解消できるよう努めておりますので、初めて弁護士と話をするという方でも安心してご相談・ご依頼をいただけるかと存じます。慰謝料請求をご検討中の方は、ぜひお気軽にご依頼をご検討ください。