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退職金は財産分与の対象?離婚前に知っておくべき計算方法と注意点

2025.09.26
  • 財産分与

退職金のうち、婚姻中に形成された部分については財産分与の対象になり得ます。

ただし、退職の時期や別居の有無、退職金の性質などによって結論は変わり、判断が難しいケースも少なくありません。

本記事では、退職金が財産分与の対象となる条件や制度上の注意点を整理し、弁護士へ相談するメリットを解説します。

 離婚時に退職金は財産分与の対象になる?

離婚のとき、退職金は分けるべき財産に入るのか疑問に思う方は少なくありません。

ここでは、退職金が財産分与の対象となる基本的な考え方を解説します。

 婚姻中の財産は原則分与の対象になる

財産分与は、夫婦が婚姻生活で協力して築いた財産を公平に分ける仕組みです。

片方が専業主婦(夫)で収入がなかったとしても、家事や子育てを通じて家庭を支えていれば、共同で形成した財産と判断されます。

退職金も同様に、婚姻期間中に積み立てられた部分は、原則として分与の対象に含まれます。

重要なのは、受け取り済みかどうかではなく、婚姻生活で形成された財産かどうか、という視点です。

 将来受け取る退職金も対象となる場合がある

まだ受け取っていない退職金についても、金額がある程度予測できるのであれば財産的価値があると考えられます。

勤続年数が長く、退職金規程が明確に示されているときは、将来の退職金も財産分与の対象と判断されることがあります。

ただし、金額が大きく変動する可能性があるときや、退職まで長期間があるときは、価値が不確定とされ対象外となる場合もあります。

結局のところ、将来の退職金を分与に含めるかどうかは、勤務先の制度や離婚時の状況によって左右されます。

 対象がどうかは退職金の性質と婚姻期間の寄与度で判断される

退職金は、勤務の対価としての後払い賃金と、長年の勤労に対する慰労金という二つの性質を持っています。

前者は婚姻生活の中で築かれた財産とされやすい一方、後者は本人固有の報酬として対象外と判断されることがあります。

さらに、婚姻期間の長さや夫婦それぞれの生活への貢献度(寄与度)も考慮されます。

たとえば、夫が長年働き、妻が家事や育児で家庭を支えてきた場合、その貢献も財産形成の一部として認められます。

そのため、退職金についても財産分与の対象に含まれやすくなります。

【参考:離婚の財産分与とは|財産分与の割合や対象となる財産

 財産分与の対象外となる場合は?

退職金は性質や支給時期によって不確定な部分が多く、状況によっては、財産として評価できないと判断されることがあります。

 勤続期間が短く、退職金が不確定な場合

勤続期間が短いと、退職金の支給自体が確定しておらず、金額を合理的に見積もることができません。

退職金は会社ごとの就業規則や勤続年数によって大きく左右されるため、勤続数年程度ではどれくらい受け取れるのかがまったく予測できないのです。

財産分与の対象とするには、ある程度安定した支給見込みや計算根拠が必要となります。

そのため、入社や転職をして間もない段階で離婚する場合は、退職金を財産分与に含めるのは現実的ではなく、裁判所でも対象外と判断されるケースが多くみられます。

 退職まで期間が長く退職金が不確定な場合

退職金は、将来の勤務状況や会社の存続状況によって支給の有無や金額が大きく変動します。

たとえば、会社の業績悪化によって退職金制度自体が廃止される可能性や、自己都合退職を選んだ場合に大幅に減額されるケースなどが考えられます。

このように、制度は存在しても実際に支給されるか不確実という状況では、将来の退職金を財産とみなすのは現実的ではありません。

したがって、退職までの期間が長い場合は、預貯金や不動産など現時点で確定している財産を基準に話し合うことが現実的です。

 慰労金など個人への報酬とされる場合

退職金の中には、長年の勤務に対する慰労や功労の意味合いが強いものがあります。

この場合は、夫婦が協力して築いた財産というよりも、本人の労務や努力に対して直接支払われる性質が強いため、財産分与の対象外とされることがあります。

具体的には、会社の就業規則や退職金規程に慰労金として明記されている場合などです。

こうしたケースでは、本人固有の財産として扱われます。

夫婦としての寄与分が直接反映されにくい部分であるため、対象かどうかを判断するには退職金の内訳をよく確認する必要があります。

 別居後に積み上がった分は対象外となる場合

別居後に積み上がった財産は、夫婦の協力によって形成されたものとは言えず、退職金についても対象外とされることが一般的です。

ただし、別居時点で退職金にすでに発生していた権利や、勤続年数に応じて蓄積されていた部分については対象となる場合があります。

別居開始時点での状況を正しく整理し、証拠を確保しておくことが重要です。

【関連記事:離婚成立前に別居をしている場合の財産分与の進め方

 退職金を分けるときの計算方法と割合の考え方

退職金は、婚姻期間に対応する部分を基準に按分して計算しますが、寄与度や夫婦の事情によって割合が修正されることもあります。

ここでは具体的な計算の考え方を整理します。

 婚姻期間に対応する部分を按分して計算する

退職金を財産分与する際には、婚姻期間に対応する部分だけを切り出して計算するのが基本です。

たとえば、勤続30年のうち婚姻期間が15年で、退職金が900万円と見込まれる場合を考えてみましょう。

まず900万円 × 15/30 = 450万円が婚姻期間に対応する部分となります。

さらにこれを夫婦で按分するため、原則として2分の1ずつ分け合い、最終的には225万円ずつが分与対象額となります。

このように、婚姻期間中に形成された部分に限定して分与額を算出するため、退職金全体が分与対象となるわけではありません。

 基本は2分の1だが、寄与度や事情で修正される

退職金の分与割合は、原則として2分の1が基準です。

これは夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を平等に分けるという考え方に基づいています。

ただし、夫婦それぞれの寄与度や特殊な事情がある場合には、この割合が修正されることがあります。

たとえば、別居期間が長く協力関係が途絶えていたケースや、病気や事故などで一方の負担が大きかったケースでは、分与割合が減少・増加することがあります。

最終的な判断は、夫婦の生活状況や家庭内での役割分担、婚姻期間中の事情を総合的に考慮して決められます。

 婚姻期間が10年以上なら分与が認められやすい

夫婦の婚姻期間が長いほど、双方が退職金形成に寄与したと評価されやすくなります。

とくに10年以上の結婚生活が続いている場合には、退職金の財産分与が認められる可能性が高まります。

これは、長期間にわたって家計や生活を支え合ったことで、共同で築いた財産との認識が強くなるためです。

加えて、専業主婦(夫)やパート勤務で子育てや家事を担っていた場合には、その貢献度が具体的に考慮され、退職金が分与の対象に含まれやすくなります。

 退職金の財産分与で知っておくべき注意点

退職金の財産分与は、対象になるかどうかだけでなく、状況によって扱いが変わる点にも注意が必要です。

ここでは、退職金を分ける際に見落としやすい具体的な注意点を整理します。

 公務員の退職金は対象に含まれやすい

公務員の退職金は、勤務先が法律や条例に基づいて制度を整備しているため、民間企業よりも安定して支給される傾向があります。

金額や算定方法が明確に決まっているため、将来不確定という理由で対象外とされる可能性は低くなります。

加えて、婚姻期間が長い場合には、配偶者が家庭生活を支えてきた寄与が反映されるため、高額な分与額となるケースも少なくありません。

 専業主婦も家事労働の寄与が認められる

退職金は一見すると本人の労働の成果に思われがちですが、実際には家庭を支えた配偶者の存在が大きく影響しています。

専業主婦として家事や育児を担うことで、夫が安心して働き続けられる環境が整えられていたと評価されるのです。

そのため、収入がなかったとしても寄与なしとは判断されず、財産分与の対象に含まれる可能性が高いといえます。

裁判例でも、専業主婦の貢献を理由に退職金分与が認められたケースは多数あります。

【関連:専業主婦も離婚で財産分与が請求可能!平均額や家事をしない場合は?

 共働きは退職金額の差で不公平になりやすい

共働きの夫婦の場合、双方に退職金が見込まれることも多く、その金額差が大きいと分与をめぐる不公平感が問題になります。

たとえば、一方が大企業に勤めていて数千万円規模の退職金が見込まれ、もう片方は中小企業や非正規勤務で退職金が少ないケースです。

このような場合、単純に半分に分けると片方に大きな負担が生じる可能性があります。

そのため、収入状況や家庭での役割分担を考慮して調整されるケースが多く、慎重な判断が必要とされます。

 転職や勤続年数で対象部分が変わる

退職金の分与対象は、婚姻期間中に積み立てられた部分に限られます。

そのため、勤続年数が長ければ婚姻期間に対応する部分を比較的明確に算定できますが、勤続年数が短い場合には金額の予測が難しく、判断も不安定になりがちです。

加えて、転職を繰り返している場合には、勤務先ごとに退職金制度の有無や算定方法が異なるため、単純に合算して扱うことはできません。

婚姻前の勤続期間に応じた退職金や、離婚後に積み立てられる部分は原則として対象外とされ、婚姻中に形成された部分のみが分与の対象となります。

このため、実際の財産分与では、就業先の退職金規程や勤続年数の証明資料をもとに、対象となる部分を具体的に計算していく必要があります。

 税金の影響で手取り額が変わる

退職金は原則として退職所得として課税されます

退職所得控除などの優遇措置があるため税額は抑えられますが、それでも受け取れる金額は額面より少なくなります。

財産分与の取り決めを行う際は、実際に手元に残る金額を前提に考えなければ、不公平な分配につながる可能性があります。

税金の計算方法や控除額を理解しておくことが重要です。

 退職金と年金を混同すると不利になる

退職金の中には、年金として分割して支給される制度もあります。

この場合、退職時に一括で支給される退職金とは性質が異なるため、財産分与の扱い方が変わる可能性があります。

退職金と年金を混同すると、本来分与できる部分を見落としたり、対象外の部分まで分与を求めてしまうといった誤解につながることがあります。

年金については、将来の分割請求制度(年金分割)と整理して考える必要があります。

 勤務先や制度によって取り扱いが違う

退職金の支給条件や算定方法は、勤務先の規程や制度ごとに大きく異なります。

たとえば、公務員や大企業は明確な規程が整備されていますが、中小企業では退職金制度がない場合もあります。

加えて、同じ勤務先でも勤続年数や退職理由(定年退職・自己都合退職など)によって金額が大きく変動するケースがあります。

財産の分与を検討する際は、勤務先の制度を必ず確認しましょう。

 弁護士に相談することで得られるメリット

退職金をめぐる財産分与は、計算が複雑なうえに制度の理解も欠かせないため、夫婦だけで解決しようとすると行き詰まるケースが少なくありません。

弁護士に相談すれば、手続きや交渉を任せられるだけでなく、将来を見据えた適切な解決策を見つけることができます。

【関連:離婚の財産分与でかかる弁護士費用の相場

 

 調停などの法的手続きをスムーズに進められる

退職金を含めた財産分与は、夫婦だけの話し合いで合意できないことも多く、その場合は家庭裁判所での調停に進むことになります。

弁護士に依頼すれば、必要な書類の準備や主張の整理を任せられるため、自分だけで対応するよりも短期間で解決に近づける可能性が高まります

 計算や交渉を任せて適正な割合で解決できる

退職金の分与は計算方法が複雑で、婚姻期間の切り出し方や支給条件の確認が欠かせません。

弁護士に相談すれば、客観的な資料をもとに計算を行い、交渉でも法的根拠を示しながら主張してもらえるため、不利な条件で合意してしまうリスクを避けられます

 将来の生活設計に沿ったアドバイスが受けられる

財産分与は、離婚後の生活設計に直結します。

弁護士に相談すれば、退職金や年金といった長期的な資産を踏まえて、生活費や教育費など将来の見通しを含めたアドバイスを受けることができます。

法律的な観点だけでなく、生活面も考慮した提案をしてもらえるため、安心して離婚後の準備を進められます。

 退職金と財産分与に関するよくある質問

 離婚前に退職金を受け取った場合はどうなる?

離婚前にすでに退職金を受け取っている場合、その受け取った金額のうち婚姻期間に対応する部分は財産分与の対象となります。

 別居中に受け取った退職金は分けられる?

別居後は夫婦の共同生活が事実上終了しているとみなされるため、別居後に積み上がった退職金の部分については財産分与の対象外とされるのが一般的です。

ただし、別居前にすでに権利が発生していた部分については対象に含まれる可能性があります。

 将来の退職金も財産分与の対象になる?

退職が近く、金額をある程度見積もれる場合には将来の退職金も対象になりますが、退職まで長期間あるなど金額が不確定な場合は、対象外と判断されることが多いです。

 まとめ

退職金は婚姻中に形成された部分について財産分与の対象になる一方、勤続年数や退職までの期間、退職金の性質によっては対象外となることもあります。

計算方法や割合は複雑で、制度や税金の影響も受けるため、弁護士に相談することで安心して手続きを進めることができます。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)