離婚の財産分与は税金がかかる?損をしないための基礎知識と注意点
- 財産分与

離婚の財産分与は、原則として非課税です。ただし、不動産の譲渡や名義変更、分与額が大きい場合などは課税の対象となることがあります。
この記事では、財産分与に関係する税金の種類や課税の基準を整理し、税金で損をしないためのポイントをわかりやすく解説します。
目次
離婚の財産分与に税金はかかるの?
離婚に伴う財産分与では、現金や預貯金、不動産など、さまざまな財産が対象になります。
分与の方法によっては税金が関係することもあるため、まずは税金の基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。
ここでは、財産分与と税金の関係について基本的な考え方を確認します。
財産分与は原則非課税
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚の際に公平に分ける制度です(民法第768条)。
この財産分与は、原則として税金の対象にはなりません。
夫婦の共有財産を清算する行為とみなされるため、譲渡や贈与のように一方がもう一方に利益を与えるものとは考えられないからです。
そのため、現金や預貯金を分け合う場合などは課税されず、税金を支払う必要はありません。
名義変更や財産の性質によって課税の有無が変わる
財産分与は原則として非課税ですが、名義の移転は財産の権利が移動したとみなされるため、資産の種類によっては課税が生じることがあります。
現金や預貯金のように名義変更を伴わない財産は非課税ですが、不動産や自動車など名義を変更して分ける財産は注意が必要です。
加えて、分与の割合が極端に偏っている場合も、税金が発生するおそれがあります。
どの財産をどのように分けるかによって課税の有無が変わるため、主な税金の種類を知っておく必要があります。
【関連記事】離婚の財産分与とは|財産分与の割合や対象となる財産
財産分与にかかる主な税金の種類
財産分与で課税される可能性がある場合、関係する税金はいくつかの種類に分けられます。
ここでは、代表的な三つの税金と、それぞれがどのような場面で関係するのかを解説します。
譲渡所得税:不動産や株式を譲渡して利益が出たときに課される税
譲渡所得税とは、不動産や株式などの資産を売却して利益(譲渡益)が出たときに課される税金です。
離婚の際、財産分与として自宅などの不動産を相手に渡したり、売却して代金を分けたりする場合に、この譲渡所得税が関係します。
次のようなケースでは、課税の対象となるおそれがあります。
- 夫名義の不動産を妻に名義変更した際、取得時よりも価値が上がっている
- 持ち家を売却して現金で分与した結果、譲渡益が発生した
- 株式や投資信託などを分与の一環として売却した
以上のような場合は、税務上、譲渡による利益があったと判断され、譲渡した側に譲渡所得税が課される可能性があります。
不動産や株式の価値、分与の方法によって扱いが異なるため、課税の有無は事前に税務署や弁護士に確認しておくことが大切です。
贈与税:相手に渡す財産が不相当に多いと判断されたときに課される
贈与税とは、個人が他の個人から財産を無償でもらったときに課される税金です。
財産分与は夫婦の共有財産を清算する行為とされるため、通常は贈与税の対象にはなりません。
しかし、分与の金額や財産の内容が不相当に多い場合には、清算の範囲を超えて贈与とみなされることがあります。
たとえば、次のようなケースです。
- 婚姻期間が短いにもかかわらず、相手に高額な不動産を渡した
- 預貯金や保険金などを、生活実態に比べて過剰に分与した
- 財産分与の名目で、実質的に一方に資産を移した
このような場合、受け取った側に贈与税が課される可能性があり、その判断は金額や状況によって異なります。
登録免許税:不動産の名義変更や権利移転の登記を行う際に課される税
登録免許税とは、不動産や自動車などの名義を変更したり、権利を移転したりする際に課される税金です。
離婚の財産分与で不動産の名義を一方に移す場合や、新たに登記を行う場合には、この税金が発生します。
課税の対象となる主なケースは、次のとおりです。
- 共有名義の住宅を、どちらか一方の単独名義に変更する
- 持ち家を分与の一環として相手に譲渡し、名義を移す
- 財産分与のために新たに抵当権や権利設定登記を行う
登録免許税は、財産を名義上で動かすときに生じる税金です。
離婚の際に不動産を扱う場合は、分与の方法によって税負担が変わることもあるため、手続きの流れを確認しておくと安心です。
【関連記事】財産分与と税金について弁護士が解説!あげる方ももらう方も必見
財産分与で税金が発生するのはいくらから?
財産分与で税金が発生するかどうかは、分与の内容や金額によって異なります。
ここでは、主な税金ごとに、どのような場合に・いくらから課税されるのかを解説します。
譲渡所得税:譲渡益が出た金額から課税される
譲渡所得税の対象となるのは、売却額から取得費や譲渡費用を差し引いたあとに利益(譲渡益)が残る場合です。
離婚による財産分与では、相手に不動産を譲り渡す際にその資産価値が上がっていると、譲渡益が生じたとみなされることがあります。
この場合、譲渡した側に譲渡所得税が課される可能性があります。
ただし、離婚の清算目的として行われる分与であれば、譲渡とみなされず課税されないケースもあります。
贈与税:110万円を超える贈与が対象になる
贈与税は、個人が1年間に受け取った財産の価額が110万円を超える場合に課税されます(基礎控除額)。
この110万円を超える部分に対して、金額に応じた税率が適用されます。
離婚に伴う財産分与では、夫婦が協力して築いた共有財産を清算する目的であれば課税されません。
ただし、分与の内容が実質的に贈与と判断されるほど多い場合は、贈与税の対象となるおそれがあります。
登録免許税:名義変更時に固定資産評価額に応じてかかる
登録免許税は、不動産の名義を変更したり、権利を移転したりするときに発生します。
税額は、不動産の固定資産評価額に一定の税率を掛けて計算されます。
登記の種類によって税率は異なりますが、主な目安は次のとおりです。
- 所有権移転登記(売買・財産分与など)… 評価額 × 2%
- 抵当権設定登記 … 評価額 × 0.4%
- 所有権保存登記 … 評価額 × 0.4%
たとえば、固定資産評価額が2,000万円の不動産を財産分与で単独名義に変更する場合、所有権移転登記では 約40万円(2,000万円 × 2%) が目安となります。
税額は、登記の内容や評価額によって異なるため、評価額を確認し、登記費用を見込んでおくことが大切です。
不動産売却時:利益が出た分に譲渡所得税がかかる
離婚後に不動産を売却して現金で清算する場合、売却益が出れば譲渡所得税が課されることがあります。
課税の対象となるのは、売却額から購入時の価格(取得費)や仲介手数料などの譲渡費用を差し引いたあとに残る利益部分です。
不動産を売却して得た利益には、所有期間に応じた税率が適用されます。
一般的な目安は次のとおりです。
- 所有期間が5年以下(短期譲渡所得)… 約39%(所得税+住民税)
- 所有期間が5年超(長期譲渡所得)… 約20%
この税率は所有期間や物件の状況によって異なります。
離婚の財産分与で不動産や住宅ローンがある場合の税金の注意点
不動産や住宅ローンが関係する財産分与では、税金の扱いがより複雑になります。
名義変更や売却の方法によって、課税の有無や税額が変わることもあるため注意が必要です。
ここでは、不動産を分ける際に知っておきたい主なポイントを解説します。
住宅ローン付きの家を分与する場合の税負担
住宅ローンが残っている不動産を財産分与でどちらか一方に渡す場合、名義とローンの両方をどう処理するかによって税金の扱いが変わります。
ローンを引き継ぐ形で不動産を取得する場合は、金融機関の承諾を得て、債務の引き受け手続きを行うことが必要です。
加えて、ローン残債よりも不動産の評価額が低いオーバーローンの状態では、家を売却しても債務が残ることがあります。
このような場合には、売却による譲渡所得税よりも、ローンの整理方法の検討が優先されるケースが多くみられます。
不動産の名義変更・持分移転にかかる費用と流れ
不動産を財産分与でどちらか一方の名義に変更する場合は、登記の手続きが必要です。
名義変更や持分移転は法務局で行い、登録免許税や司法書士への報酬が主な費用として発生します。
手続きの流れはおおまかに次のとおりです。
- 夫婦間で不動産の分与内容を決め、必要書類(離婚協議書・登記原因証明情報など)を準備する
- 登記申請書を作成し、法務局に提出する
- 登録免許税を納付し、登記が完了したら登記識別情報(権利証)を受け取る
費用の目安は、不動産の固定資産評価額に応じた登録免許税(評価額×2%)と、司法書士に依頼する場合の報酬として5万円〜10万円前後が一般的です。
売却して清算する場合の税金手続きと注意点
財産分与の方法として、不動産を売却して現金で清算するケースも少なくありません。
この場合、売却益が出れば譲渡所得税の対象となるため、確定申告が必要になります。
売却後の税金手続きは、次の流れで行います。
- 売却代金を受け取った翌年の確定申告期間(通常は2月〜3月)に申告
- 売却額・取得費・譲渡費用をもとに譲渡所得を計算
- 所得税・住民税を納付
加えて、自宅を売却した場合は、3,000万円特別控除が適用されることがあります。
この特例を使うと、売却益から最大3,000万円を差し引けるため、課税額を大幅に減らすことができます。
ただし、離婚後に譲渡する場合や、すでに別居してから3年以上経過している場合は、適用対象外となることもあります。
登記・契約上のトラブルを防ぐためのポイント
不動産の財産分与では、名義変更や売却の際に契約や登記の手続きが複雑になることがあります。
次のような点でトラブルが起きやすいため、注意が必要です。
- 離婚前に不動産を売却したが、名義変更や清算が離婚成立後にずれ込んだ
- 共有名義のまま放置し、後に売却や再登記の際に同意が取れなくなった
- 登記書類の不備により、売却代金の受け取りや登記完了が遅れた
こうしたトラブルは、税金の計算よりも前に、誰が、いつ、どの名義で扱うかを明確にしておくことで防げます。
分与内容を協議書や公正証書にしておくと、登記・売却時の証明書類としても有効です。
【関連記事】離婚時の家の財産分与|住宅ローンがある・妻が住み続ける場合を解説
財産分与で損をしないための3つのポイント
財産分与では、税金や不動産の扱いを誤ると、思わぬ負担が生じることがあります。
ここでは、離婚後のトラブルや損失を防ぐために意識しておきたい3つのポイントを解説します。
財産分与の対象と範囲を正確に把握する
財産分与では、どの財産が分与の対象になるのかを正確に把握しておくことが大切です。
対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた共有財産であり、主に次のようなものが含まれます。
- 預貯金・現金・給与・退職金(婚姻期間中の部分)
- 不動産・自動車・株式・保険などの資産
- 住宅ローンやカードローンなどの債務(マイナスの財産)
一方で、次のような財産は特有財産として分与の対象外になります。
- 結婚前から所有していた財産
- 親や親族から相続・贈与された財産
- 個人的な慰謝料・保険金など
これらを明確に区別しないまま分与を進めると、共有財産だと思っていたのに対象外だった、相手の資産を把握できていなかったなどのトラブルにつながります。
婚姻期間中に築かれた財産を整理し、どこまでが共有財産なのかを可視化しておくことが大切です。
【関連記事】特有財産とは?共有財産との違いや特有財産になるもの
税務署・専門家に事前確認を行う
財産分与に関する税金は、財産の種類や分与の方法によって扱いが異なります。
不動産の名義変更や譲渡益の有無など、ケースごとに判断が分かれる点も多く見られます。
そのため、税金の扱いを自己判断で進めると、後から追徴課税や申告漏れが指摘されるおそれもあります。
不明点がある場合は税務署での確認や、税理士・弁護士などへの相談が有効です。
事前に確認しておくことで、課税対象の誤解や手続きミスを防ぎ、離婚後の生活設計も立てやすくなります。
弁護士に相談して、法的・税務的リスクを整理する
財産分与では、税金の扱いだけでなく、法的な手続きや契約の流れも関係します。
不動産や預貯金の分け方、名義変更の順序、協議書の内容次第では、後からトラブルにつながることもあります。
弁護士に相談することで、法的リスクと税務リスクの両面から整理でき、最も負担の少ない方法を検討することができます。
加えて、調停や公正証書の作成を見据えたアドバイスを受けられるため、手続き全体を見通した判断が可能になります。
財産分与は、単に分けるだけでなく、その後の生活をどう安定させるかにも直結する問題です。
法律と税の両面を理解したうえで進めることが、最終的に損を防ぐ一番の近道といえるでしょう。
【関連記事】離婚の財産分与でかかる弁護士費用の相場
離婚に伴う財産分与の税金に関連するよくある質問
財産分与に確定申告は必要?
財産分与は、夫婦の共有財産を清算する行為とされるため、原則として確定申告は不要です。
ただし、不動産を売却して利益が出た場合や、分与の内容が不相当に多く贈与税の対象となる場合は、申告が必要になります。
現金を渡す場合も税金はかかる?
離婚の財産分与で現金を渡す場合は、原則として税金はかかりません。
ただし、分与額が生活実態や財産の範囲に比べて極端に多い場合は、贈与税の対象となることがあります。
不動産を売却して分ける場合の税金は?
不動産を売却して現金で分ける場合、売却益(譲渡益)が出たときのみ譲渡所得税が課されます。
売却益が出たときは、翌年の確定申告が必要です。
税金をできるだけ抑えるにはどうすればいい?
税金を抑えるためには、控除制度を活用し、課税対象を正確に把握することが重要です。
財産の分け方や名義変更の方法によっても税負担が変わるため、内容を整理して進めましょう。
まとめ
離婚の財産分与は、基本的に税金がかからない仕組みですが、不動産の譲渡や名義変更の方法によっては課税対象となる場合があります。
とくに、不動産を売却して清算するケースや、夫婦片方に分与額が大きく贈与とみなされるケースでは、税金の負担が生じる可能性があります。
財産の内容と分け方を整理し、制度を理解したうえで進めることで、余計な負担を避け、離婚後の生活を安定させることができます。
判断が難しい部分や手続きが複雑な場合は、弁護士に相談して、法的・税務的なリスクを整理することが有効です。

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