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養育費は減額できる?再婚・生活が苦しいときの見直し条件と注意点

2025.12.12
  • 養育費

養育費は一度決めた金額でも、収入が減ったり、再婚によって家計の負担が増えた場合には、減額が認められることがあります。

しかし、生活が苦しいので下げてほしいと伝えても、相手が応じてくれないことも少なくありません。

一方的に支払い額を変更すると、のちのトラブルにつながるおそれがあります。

養育費の減額には、家庭裁判所での手続きや、事情を示す証拠の提出が必要となるため、どのような場合に見直しが認められるのかを正しく理解しておくことが大切です。

この記事では、養育費が減額できる主な理由や、再婚時の注意点、相手が応じない場合の対応や手続きの流れについて分かりやすく解説します。

 養育費はどんな理由で減額できる?

養育費は、一度取り決めた内容でも、事情の変更があれば見直しが認められることがあります(民法766条(離婚後の子の監護)2項・3項)。

事情の変更とは、支払う側・受け取る側の生活状況が大きく変わり、当初の取り決めが適切ではなくなった場合をいいます。

ここでは養育費を減額できる代表的なケースを解説します。

 収入が大きく減った場合

支払う側の収入が減少し、従来の金額を維持することが難しくなったときは、減額が認められることがあります。

収入減少には、会社の業績悪化による給与減、残業代の減少、転職による収入ダウンなどが含まれます

加えて、減収を主張する場合は、源泉徴収票・給与明細・雇用契約の変更内容など、客観的な資料が必要です。

ただし、自己都合の退職など、意図的な減収は認められにくいため注意が必要です。

扶養家族が増えて生活が苦しくなった場合

再婚して新たに子どもを扶養するようになった場合や、同居家族が増えて家計の負担が重くなった場合には、養育費の見直しが認められることがあります。

複数の子どもをできる限り平等に扶養するべきという考え方が背景にあり、家族の状況や収入の変化などを踏まえて総合的に判断されます。

ただし、扶養家族が増えたこと自体は減額の決定的な理由にはならず、家計の収支がどの程度変化したのかを資料で具体的に示すことが重要です。

病気やケガで働けなくなった場合

病気やケガなど、支払い能力に直結する事情が生じたときも、事情の変更として扱われます。

たとえば治療や通院により勤務時間を減らす必要がある場合や、長期休職を余儀なくされた場合などが該当します。

この場合も、医師の診断書や休職を証明する書類など、客観的資料の提出が欠かせません。

子どもの生活状況が変化した場合

支払う側だけでなく、子どもの生活環境が変わったことによって、養育費の必要性が下がるケースもあります

たとえば、以下のような場合が挙げられます。

  • 就職やアルバイトで生活費の一部を賄えるようになった場合
  • 進学せず自宅から通うことで費用が減る場合
  • 親の再婚や同居の変更により、生活費の負担構造が変わる場合

こうした事情を理由に見直しを求める場合は、学校の費用、生活費の実態、同居状況などがわかる資料によって、どの程度負担が軽減されているのかを具体的に示すことが重要です。

審判例で減額が認められやすい事情

家庭裁判所の審判例では、支払う側の生活状況が大きく変わり、従来の金額を維持することが難しくなった場合に、養育費の減額が認められる傾向があります

収入の大幅な減少や、扶養家族の増加、病気・ケガによる働き方の変化などが、事情の変更として判断された例がみられます。

いずれの場合も、家計の収支や生活状況がわかる資料をもとに、支払い能力が実質的に低下しているかどうかが重視されています。

ただし、同じ事情があっても必ず減額が認められるわけではなく、最終的には個別事情に応じて判断される点に注意が必要です。

【関連記事】養育費を後から変更(増額・減額)することは可能?

再婚したとき、養育費はどれくらい減額できる?

再婚により新たに子どもを扶養するようになった場合など、家計の負担が増えたときには、養育費の見直しが認められる可能性があります。

しかし、再婚したからといって自動的に減額されるわけではなく、家計の状況や扶養人数の変化などを踏まえて個別に判断されます。

ここでは、再婚した場合の養育費の具体的な見直しの考え方を説明します。

再婚した際の養育費は減額算定表の再計算で決まる

養育費の金額は、基本的に家庭裁判所が公表している養育費算定表を用いて算出します。

算定表は、双方の年収や子どもの人数を基準に、標準的な養育費の目安を示したものとして、調停や審判でも広く利用されています。

再婚して新たに子どもを扶養するようになった場合は、扶養人数が増えた状態で算定表を使い直し、金額を再計算することになります。

扶養人数が増えると、支払う側の生活費として必要とされる部分が大きくなるため、結果として養育費が下がる傾向があります。

再婚による減額は、このような扶養人数の増加を前提とした再計算を基準に判断される仕組みです。

再婚相手の収入は原則影響しない

再婚相手が働いているために家計が楽になったとしても、その収入が養育費の計算に反映されることはありません。

養育費は、あくまで実の親同士の扶養義務に基づくものであり、再婚相手が家計を支えていたとしても、支払い能力が高まったと判断されるわけではないためです。

そのため、再婚相手の収入があるから減額されるはずだという考え方は誤解であり、減額が認められるかどうかは、支払う本人の収入や扶養状況の変化が基準になります

扶養家族が増えると減額が認められやすい

再婚後に子どもが生まれたり、再婚相手の連れ子を新たに扶養するようになった場合には、支払う側の生活費が増えるため、養育費の減額が認められやすくなります。

これは、複数の子どもをできる限り平等に扶養すべきだとする考え方が背景にあり、扶養する人数が増えることで支払い能力の評価が変わるためです。

ただし、扶養家族が増えたという事実だけでは足りず、家計の収支や生活費の内訳など、どの程度負担が増えているのかを具体的な資料で示す必要があります。

過去の審判例では数万円単位の減額が多い

審判例では、扶養家族が増えた場合や収入が大きく減少した場合など、支払い能力が低下したと判断されたケースで、数万円単位の減額が認められた例があります

もっとも、減額幅は個々の事情によって大きく異なり、同じ状況であっても必ず同程度の減額が認められるわけではありません。

家計の収支、扶養する人数、病気や離職の有無など、複数の要素を総合的に見て判断される点に注意が必要です。

再婚による減額を検討する際には、これらの審判例を参考にしつつ、現在の収入や扶養状況を前提に算定表で再計算することが重要になります。

【関連記事】養育費とは|養育費の相場や支払い義務・取り決め方法や計算例を解説

養育費の減額を考えるときの注意点とは?

養育費を減額したいと考えても、自己判断で支払い額を変えることは避けなければなりません。

減額が認められるかどうかは、生活状況や収入の変化を客観的に示す必要があり、やり方を誤るとトラブルにつながるおそれがあります。

ここでは、減額を検討するときに特に注意した事項を解説します。

一方的に支払いを減らすと法的トラブルになる

生活が苦しいからと支払い額を本人の判断で減らしたり、止めてしまうと、後になって未払いの養育費として請求される可能性があります。

とくに、公正証書や調停調書のように、養育費の取り決めが文書で正式に残っている場合は、滞納分をそのまま強制的に差し押さえられる可能性があります。

減額を求めたい場合は、相手に相談したうえで、必要に応じて調停や審判で正式に見直しを申し立てることが重要です。

生活苦は証拠がないと認められにくい

家計が苦しいという訴えだけでは、事情の変更として扱われない場合があります。

減額を求めるには、収入が下がった事実、支出が増えた経緯、家計の状況などを客観的に示す資料が必要です。

具体例としては、給与明細・源泉徴収票・家計簿・支出内訳・医療費の領収書などが挙げられます。

再婚後の生活変化は自分の事情だけでは足りない場合がある

再婚して扶養すべき家族が増えたとしても、そのことだけで自動的に減額が認められるわけではありません。

家庭裁判所では、支払う側だけでなく、子どもの生活状況や受け取る側の家計なども含め、総合的に判断されます。

そのため、再婚したから減るはずという思い込みは禁物で、実際の収支の変化や扶養の実態を資料に基づいて示すことが重要になります。

養育費を減額するための手続きとは?

養育費を減額したい場合は、自己判断で支払い額を変更するのではなく、決められた手続きに沿って見直しを求める必要があります。

ここでは、減額手続きを進める際の一般的な手順を解説します。

まずは話し合いで条件を調整する

減額を考えるときは、まず相手に事情を説明し、話し合いで合意を目指します。

収入が減った理由や家計がどう変化したのかを丁寧に伝え、双方が納得できる金額を探るのが理想です。

ただし、口頭だけの約束では、あとで「言った・言わない」の問題が生じるおそれがあるため、書面で残すことが重要です。

合意できない場合は養育費減額調停で見直しを求める

話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てることになります。

調停では、調停委員を介して双方の事情を整理しながら、減額が妥当かどうかを検討していきます。

その際には、収入資料や家計の状況がわかる書類を提出し、事情が変化したことを客観的に示すことが必要です。

話し合いがまとまり、双方が合意した場合には、その内容が調停調書として正式な取り決めとなります。

【関連記事】養育費請求調停における流れを解説!有利に進めるために必要なこととは?

調停がまとまらなければ審判で裁判所が判断する

調停で合意に至らなかった場合は、審判に移行し、家庭裁判所が減額の可否を最終的に判断する段階へ進みます。

審判では、収入・扶養人数・生活状況といった事情を詳しく確認し、支払い能力がどの程度変化したのかを資料に基づいて裁判所に示すことが求められます。

加えて、審判の判断には法的拘束力があるため、決定後はその内容に従わなければなりません。

公正証書がある場合は変更手続きを行う

もともと公正証書で養育費を取り決めている場合は、その内容を正式に変更する必要があります。

公正証書は強制執行力を持つため、変更しないまま支払い額を減らすと、滞納分を差し押さえられるおそれがあります。

公正証書の内容を変更するには、以下の方法があります。

  • 新しい内容で公正証書を作り直す
  • または調停・審判で決まった内容を新しい根拠として扱う

【関連記事】養育費を公正証書に残す際の記載内容とは?

養育費を減額したいのに相手が応じないときはどうする?

減額について話し合いを申し出ても、相手が応じてくれない場合もありますが、相手の同意が得られないからといって、減額の検討が進められなくなるわけではありません。

養育費の見直しは、事情の変更があったかどうかをもとに判断されるため、必要に応じて第三者の関与や、家庭裁判所の制度を利用していくことが重要です。

ここでは、相手が減額に同意しない場合に考えられる対応方法を解説します。

相手が拒否しても同意なしで手続きが進められる

相手が話し合いや、減額には応じないと主張していても、支払う側の申し立てによって見直しの手続きを進めることは可能です。

減額が認められるかどうかは、双方の同意ではなく、生活状況や収入の変化といった事情の変更があるかで判断されます

そのため、相手が強く拒否している場合でも、同意が得られないから何もできない、という状況にはなりません。

面会交流の有無は養育費と独立した問題

相手が面会交流に来ないなら減額しないと主張するケースがありますが、面会交流と養育費はまったく別の問題として扱われます。

面会交流が実施されているかどうかは、減額の判断に影響を与えません

この誤解が原因となって話し合いがこじれることも多いため、養育費は子どもの生活のためのものという原則を理解しておきましょう。

直接の話し合いが難しいときは、第三者を挟む

相手が強く拒否していたり、感情的な対立が続いている場合は、当事者同士だけで話し合いを進めることが難しくなることがあります。

そのような場面では、弁護士や第三者を介してやり取りを行うことで、必要な情報が整理され、冷静に状況を検討できるようになります。

第三者が入ることで、相手の感情に影響されずに手続きを進められるほか、伝えるべき事情や資料を適切な形でまとめてもらえるという利点もあります

  • 今の状況で減額が認められる可能性はどの程度あるのか
  • 用意すべき資料は何か
  • 今後どのような手続きが適しているか

直接の交渉が負担になっている場合や、話し合いが長期間停滞している場合には、弁護士のサポートを検討することも有効です。

養育費の減額に関連するよくある質問(FAQ)

自己破産しても養育費の減額はできる?

自己破産をしても、養育費そのものが免除されるわけではありません。

ただし、事情の変更として減額が認められる可能性があります。

相手が再婚したときは逆に増額される?

相手(受け取る側)が再婚しても、再婚相手の収入は原則として養育費の計算に影響しません。

ただし、子どもの生活環境が大きく変化した場合には、状況によって見直しが検討されることもあります。

 一度減額した後に再度変更できる?

養育費は、事情の変更があれば何度でも見直しを求めることができます。

公正証書の取り決めをそのままにしておくリスクは?

公正証書には強制執行力があるため、取り決めを変更しないまま支払い額を減らすと、滞納分を差し押さえられるおそれがあります。

減額が必要な事情がある場合は、公正証書の内容を正式に変更するか、調停・審判で新たな取り決めを得ることが重要です。

まとめ

養育費は、一度取り決めた金額であっても、収入の減少や扶養家族の増加など、生活状況に大きな変化が生じた場合には見直しが認められることがあります。

ただし、自己判断で支払い額を変更すると未払いとして扱われるおそれがあるため、事情の変更を客観的に示したうえで、適切な手続きを踏むことが重要です。

相手が話し合いに応じない場合でも、第三者を介した調整や家庭裁判所の制度を利用することで、減額の可否を判断してもらう道は開かれます。

状況に応じて、必要な資料の整理や手続きの進め方について弁護士に相談することも有効です。

養育費の負担が大きく感じられるときは、一人で抱え込まず、現在の生活状況に合った適切な方法で見直しを検討しましょう。

【関連記事】養育費を支払うことは義務?

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)