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親権はどう決まる?離婚前に知っておきたい裁判の流れと判断基準

2025.11.21
  • 親権

親権は離婚時の大きな争点であり、協議で合意できなければ家庭裁判所が判断することになります。

調停から裁判へ進むと長期化する傾向があり、準備の内容によって結果が左右されるケースもあります。

加えて、裁判まで進むと時間や負担も大きくなるため、どのような基準で親権が決まるのかを事前に理解しておくことが重要です。

この記事では、親権を決める仕組みや、家庭裁判所で重視される判断基準、後悔しないための準備についてわかりやすく解説します。

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離婚する時の親権の決め方は?

離婚時の親権は、夫婦の話し合いで決めるのが基本ですが、合意に至らない場合は、家庭裁判所で調停や審判によって判断されます。

ここでは、協議から調停・裁判へ進む際の決定プロセスと、親権がどの段階でどのように判断されるのかを解説します。

話し合い(協議離婚)で決めるのが原則

親権は、離婚の際、夫婦の話し合いによって決めるのが原則です。

民法819条では、父母が協議で親権者を定めることが求められており、離婚届にも必ず親権者の記載が必要となります。

親権が決まらない場合、そもそも協議離婚として提出することができないため、この段階でしっかり話し合う必要があります。

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話し合いでまとまらなければ家庭裁判所で調停

協議で合意できない場合は、家庭裁判所の調停手続へ進むことになります(家事事件手続法257条)。

調停では、調停委員が双方の事情を聴き取り、意見の整理や調整を行いながら合意形成を試みます。

調停は裁判とは異なり、最終的な決定権は当事者にありますが、第三者が介在することで冷静に話し合うことができます。

親権だけでなく、面会交流や養育費といった関連事項も同時に整理されることが多く、離婚後の生活を見据えて進めることが重要です。

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調停でも合意できない場合は裁判(審判)で決まる

調停で合意に至らない場合、家庭裁判所が審判または裁判で親権者を決めることになります(民法819条家事事件手続法)。

審判では、子どもの利益を最優先に、監護の実績や生活環境の安定性、子どもの意思、安全面など、さまざまな事情が総合的に検討されます。

審判・裁判に移行すると手続が長期化しやすく、提出する資料の内容や準備状況が結果に影響しやすいのが特徴です。

家庭裁判所で重視される親権の判断基準

家庭裁判所では、子どもの利益を最優先に、育児状況や生活環境、安全面などを総合的に見て判断します。

ここでは、裁判で重視される主な判断基準を整理します。

子どもの利益が最優先される

親権の判断において最も重視されるのが子どもの利益です(民法820条)。

具体的には、子どもがこれまでどのような環境で育ってきたか、今後もその環境を維持できるかなどが重要になります。

加えて、突然の環境変化が子どもの心理や発達に影響することも考慮され、無理のない移行ができるかどうかも評価対象です。

こうした総合的な視点から、子どもの生活を最も安定させられる親が親権者として適していると判断されます。

主たる監護者(普段世話している親)が重視される

家庭裁判所では、日常的に子どもの世話をしてきた主たる監護者が誰であるかが重要な判断材料です。

監護の実績は、食事や入浴、通園・通学の対応、医療機関への付き添いなど、子どもの生活に直接かかわる行動を中心に判断されます。

とくに、別居後もどちらが安定して育児を継続しているかを重視する傾向にあり、急に監護体制を変えることが子どもに負担となる場合、現状維持が望ましいと評価されます。

そのため、現在の世話をしている親が、そのまま継続して監護することが子どもの利益につながると判断されやすい傾向にあります。

子どもの年齢・意思も判断に影響する

親権者の決定では、子どもの年齢や発達段階も重要な要素です。

年齢が低い場合は、生活面での安定や継続性が重視され、幼い子どもの場合は主に育児を担ってきた親が選ばれることが多い傾向にあります。

さらに、子どもが一定の年齢に達している場合、家庭裁判所調査官による面談で子どもの気持ちが確認され、無理のない範囲で反映されます。

経済力よりも生活環境の安定性が重視される

親権の判断では、単純な収入額よりも、子どもが安心して生活を続けられる環境が整っているかが重視されます。

経済的な支援は養育費や公的制度によって補える面があるため、どれだけ安定した生活基盤を提供できるかが判断材料となります。

たとえば、住居の確保、学校・保育園への通いやすさ、周囲のサポート体制、日々の育児を支える環境などです。

収入が高くても育児に関与していない場合は不利になることがあり、反対に収入が少なくても、安定した育児環境を維持できる親が適していると判断されるケースもあります。

DV・虐待の有無など安全面も考慮される

DVや虐待が疑われる場合、子どもの安全確保が最優先されます。

家庭内で暴力があった、子どもが恐怖を感じている、暴言が常態化しているなどの事情がある場合、暴力の有無は親権判断に大きく影響します。

被害がある場合は、保護命令制度(DV防止法に基づく)や、一時的な避難措置が取られることがあり、加害側の親が親権を持つことは適切ではないと判断されることが一般的です。

加えて、暴力が直接子どもに向けられていない場合でも、子どもの前で暴力が行われていたケースでは、心理的虐待と評価されることがあります

家庭裁判所での親権裁判の流れと期間の目安

親権をめぐる手続きは、家庭裁判所で調停を行い、それでも合意できない場合に審判や裁判へ進んでいきます。

ここでは、調停から裁判までの手続きの流れと、おおよその期間の目安を解説します。

裁判前に調停を経るのが原則

親権を裁判で争う場合でも、いきなり裁判に進むわけではありません。

家事事件手続法257条により、原則としてまず調停を行う調停前置が定められています。

この段階で争点が整理されることが多く、親権だけでなく面会交流や養育費など、関連する事項についても検討されます。

家庭裁判所での調査官面談・家庭訪問が行われる

親権が争いになっている場合、調停や審判の過程で家庭裁判所調査官が関与することがあります。

調査官は、子どもの生活状況、監護環境、親との関係性を把握するため、面談や家庭訪問を行います。

調査官の報告書は、裁判所が判断する際の重要な資料となるため、この段階での対応は慎重に行う必要があります。

調停で合意できない場合は審判・裁判へ進む

調停で合意に至らなかった場合、家庭裁判所が審判を行い、それでも解決しない場合は裁判に進むことになります。

裁判に移行すると、調査官による詳細調査、証拠提出、尋問など、より厳密な手続が行われ、審判や裁判に進むと期間が長くなる傾向があります。

【関連記事】離婚調停が不成立になったその後の離婚方法は別居・審判移行?

親権裁判は審判まで進むと1〜2年以上かかることが多い

親権裁判にかかる期間は、争点の内容や調査の必要性によって大きく変わります。

統計上、親権を含む離婚事件の審理期間は平均で約1年2〜3か月とされており、調停で早期に合意できた場合でも、全体として6か月程度を要することがあります。

一方で、親権が主な争点となり調査官の関与や詳細な証拠収集が必要なケースでは、審理が長期化する傾向があり、1年8か月前後かかった例も報告されています。

家庭訪問や関係者の聞き取り、複数回の期日など、手続きが増えるほど期間は延びやすく、当事者や子どもにとって大きな負担となります。

判決後も控訴などで延びることがある

親権裁判で判決が出ても、判決内容に不服がある場合、当事者は控訴することができ、審理は高等裁判所へ移ります(民事訴訟法281条)。

控訴審では、事実認定や法的判断が再度検討され、必要に応じて追加の資料提出や主張の整理が行われます。

さらに、高裁の判断に対しても法律上の問題があれば上告が認められる可能性があり、審理が最高裁まで続くケースもあります。

判決後も争いが長期化するリスクがあるため、できる限り早い段階で合意形成や弁護士への相談を行い、適切な方向性を固めておくことが重要です

親権裁判にかかる費用は誰が払う?

親権を裁判で争う場合、申立てに必要な実費だけでなく、弁護士費用などの負担も発生します。

ここでは、裁判にかかる主な費用の内訳や支払い方の仕組みを整理します。

親権裁判の申立費用は数千円〜1万円前後

親権裁判を申し立てる際には、家庭裁判所に納める収入印紙代や郵便切手代など、一定の実費が必要になります。

親権をめぐる審判・調停の申立費用は一般的に数千円〜1万円前後で、事案の内容によって多少前後します。

これらは比較的少額で済みますが、申立後に必要となる資料収集やコピー代などの細かな実費がかかる場合もあるため、一定の準備をしておくと安心です。

弁護士費用の相場は着手金30〜50万円程度

親権が争点となる場合、専門的な判断や証拠整理が必要になるため、弁護士に依頼するケースが多くみられます。

弁護士費用は事務所や地域によって幅がありますが、一般的に着手金30〜50万円前後、結果に応じて発生する報酬金が別途必要になるのが一般的です。

親権は子どもの生活に直結するため、調査官の関与や資料整理が必要になることがあり、弁護士のサポートが手続きのスムーズさに大きく影響します。

費用は原則それぞれが自己負担

親権裁判にかかる費用は、原則としてそれぞれの当事者の自己負担となっています。

民事裁判と異なり、家事事件では、敗訴者が相手の費用を負担するという構造がなく、弁護士費用も基本的には各自で負担します。

ただし、相手方の対応によって必要以上の費用が発生した場合や、費用負担をめぐる調整が必要なケースでは、調停や審判の中で費用に関する取り決めが行われることもあります。

【関連記事】離婚裁判の費用・弁護士費用は誰が払う?払えない場合の対処法

法テラスを利用すれば分割・立替払いも可能

費用面に不安がある場合、法テラスの民事法律扶助制度を利用することで、弁護士費用や実費を立替払いにしてもらえる場合があります。

審査基準(収入・資産・勝訴の見込み)を満たす必要はありますが、条件を満たせば毎月の分割返済で弁護士に依頼することも可能です。

親権をめぐる事件は長期化しやすいため、早い段階で利用できる制度を検討しておくことで、費用負担を抑えつつ必要な支援を受けられます。

裁判費用を抑えるには事前の準備が重要

裁判費用を少しでも抑えるには、事前の資料整理や証拠の準備を進めておくことが欠かせません。

監護状況や生活環境を示す資料が十分に揃っていれば、調査や追加資料の提出が不要になる場面が増え、結果として手続き全体がスムーズに進みます。

そのため、早い段階で弁護士と方向性を共有し、不要な争点を減らすことで、時間と費用の負担を抑えることができます。

親権裁判で後悔しないための準備

親権を争う際は、普段の育児状況や子どもの生活環境など、事前の準備によって裁判の評価が大きく変わることがあります。

ここでは、裁判前に準備しておくべき内容を整理します。

監護実績を示す記録を残す

親権を判断するうえで、これまで誰がどの程度子どもの世話をしてきたかが重視されるため、以下のような監護の実績を客観的に示せる資料を残しておくことが大切です。

  • 日々の育児内容を記録した育児日記
  • 通園・通学の送迎記録
  • 病院の付き添い記録
  • 生活の様子がわかる写真

こうした記録は、調査官の調査や審判・裁判での判断材料として重視されることが多く、別居後にどちらが安定して子どもを監護しているかを示す根拠にもなります。

子どもの生活状況を安定させる

親権を判断する際は、子どもが今後どれだけ安定した生活を送れるかが重視されます。

突然の転校や生活環境の変更は子どもに大きな負担となるため、引っ越しや勤務環境の調整が必要な場合は、子どもの負担を最小限に抑えられる方法を検討することが望まれます。

感情的な発言やSNS投稿は避ける

親権を争う場面では、感情的な言動やSNSへの不適切な投稿が不利に評価されることがあります。

相手方への暴言、子どもに関する不用意な投稿、別居の経緯やトラブルを一方的に公開する行為などは、監護能力や協力姿勢に疑問を持たれる原因になります。

加えて、SNSの内容は削除してもスクリーンショットとして残っていることが多く、調査官や裁判所が確認する資料になる場合もあります。

子どもの気持ちを尊重した行動を取る

家庭裁判所は、子どもの意向を絶対視するわけではありませんが、子ども自身の気持ちを一定程度確認し、判断材料の一つとします。

そのため、子どもが安心して過ごせるように次のような対応が重視されます。

  • 無理な誘導や心理的な圧力をかけない
  • 子どもが安心して過ごせる環境を整える
  • 面会交流の場面で、負担にならないよう柔軟に対応する

生活環境の安定だけでなく、子どもの感情面を大切にしているかどうかは、監護能力を判断する大きな要素として評価されます

弁護士に早めに相談し戦略を立てる

親権に関する争いは、調停から裁判までの流れが複雑で、準備すべき資料の種類も多くなりがちです。

早い段階で弁護士に相談しておけば、必要な証拠の整理、調査官面談への備え、主張の方向性などを計画的に進められます。

別居時の対応や監護状況の確保などは初動が非常に重要で、後からの修正が難しい場合もあります。

結果に大きく影響する部分だからこそ、親権が争点になりそうな段階で弁護士の助言を受けておくことで手続全体をスムーズに進めやすくなります。

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親権に関する裁判に関連するよくある質問

裁判で父親が親権を取れるケースはある?

父親が日常的に育児を担っていた、生活環境がより安定しているといった事情が認められる場合、父親が親権者となるケースもあります。

【関連記事】父親が離婚で親権を勝ち取るケースとは|共同親権の影響は?

離婚後に親権を変更することはできる?

可能ですが、事情が大きく変わった場合に限られ、簡単に変更が認められるわけではありません。

子どもが親権を選ぶことはできる?

子どもの意思はあくまで判断材料の一つであり、子ども自身が親権者を決めることはできません。

家庭裁判所調査官による面談などを通じて、適切な範囲で考慮されます。

裁判で決まった親権に不服がある場合どうすればいい?

審判や判決に不服がある場合、一定期間内であれば高等裁判所に不服申立て(即時抗告・控訴)を行うことができます。

まとめ

親権は、父母の希望ではなく子どもの利益を最優先に判断されます。

協議や調停の段階で話し合いが整えば負担を軽減できますが、裁判に進むと手続きが長期化しやすく、提出する資料や監護状況が判断に大きく影響します。

別居時の対応や初動の判断によって状況が変わることもあるため、迷いがある場合は早めに弁護士へ相談し、今後の進め方を確認することが大切です。

この記事の監修者

この記事の監修者

中間 隼人Hayato Nakama

なかま法律事務所
代表弁護士/中小企業診断士
神奈川県横浜市出身 1985年生まれ
一橋大学法科大学院修了。
神奈川県弁護士会(65期)